翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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桜散華 六

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 竹弥は心臓が止まりそうになるほど驚いた。
 杉屋が、魔物めいた微笑を男らしい顔に浮かべ、竹弥の醜態を見下ろしていたのだ。
「ああっ」
 絶望と驚愕に口をひらいたため、紐が離れる。先ほどまで竹弥の後ろ園を襲っていた、焦れったい責めも消えてしまい、激しい喪失感が竹弥を襲う。
「ああ……」
 失われていく熱を惜しんで、悔し泣きしている自分が信じられない。
 もはや、とことん堕ちてしまったのだ。
 いたたまれなさに、竹弥は啜り泣いた。
「しょうがないな」
「はぁっ……」
 笑いながら杉屋は竹弥の身体の前の紐を手に取る。
 確かめるように、角度を変えながら、紐を引っぱる。
「あ……ああっ、」
 今にも退こうとしている快楽の波が、戻ってきたことが竹弥をまた狼狽うろたえさせるが、杉屋の手を拒絶する言葉は出ない。それどころか、
「ああ、そ、そこ……」
 すがるような声が漏れてしまった。
「ここか?」
「ああ……」
 竹弥の声には安堵の響きすら滲んでいた。
 それを自覚できなかったのは竹弥にとっては幸運だったろう。
「ここがいいのか?」
「う……」
 白く盛りあがった臀部を痛いほどに揉まれ、竹弥は不快をしめすように首を横に振った。
「いいんだろう、ここが?」
「うー」
 やはり否定の声は出ない。
 ただ杉屋の乱暴な愛撫に翻弄され、竹弥はひたすら首を横に振りつづけていた。
「ああっ、も、もう、もうっ!」
 ふたたび燃え盛った身体が求める、たったひとつのことを要求して、竹弥は白い身体をふるわせていた。
「よし、いいぜ。遂け」
「だ、駄目だ……!」
「何故だ?」
「……よ、汚してしまう……」
 カサカサと音がして、杉屋が、衣服のどこかに用意していた懐紙のようなものを取り出したことが、竹弥の霞む目に映る。
 かすかな安心感に、竹弥は下肢の緊張をやわらげた。
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