翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

文字の大きさ
上 下
113 / 225

桜散華 四

しおりを挟む
 のけぞった刹那、首にかけられている紐が引き上げられ、先端にある異物を動かす。
(あっ……)
 竹弥自身の動きによって、股間に波が押し寄せるのだ。
「くぅ……!」
 それは未知の感触だった。
 しばし余韻に痺れ、それがおさまること数秒。
「ふぅ……」
 竹弥は、ふたたび、おずおずと首を反らしてみる。
「うう……」
 首の動きにあわせて、紐先の、体内に埋めこまれている道具もかすかに動く。
 かすかな、本当にかすかな作用だが、今の竹弥にはたまらない。
 膝立になっていた竹弥は、もじもじと切なげに身体をひねってしまう。
 リン――チリン――。
 季節はずれの風鈴の音色にも似た音が響く。
 それに合わせるように、竹弥のもらす息切れや、呻き声も。
 チリン――チリン――。
「ふぅぅ……ああっ、ああ……」
 奇妙な調べは、しばしつづいた。
「ううううっ」
 だが、どれほど首を伸ばしても背を反らしても、決定的なとどめとなる刺激をおくることはできない。
 竹弥は涙で霞む目で、辺りを見渡した。
 壁際にある和箪笥に目がいく。
 竹弥はしばし悩んだ。
 恐る恐る、膝行で箪笥に近づいてみる。どうにか柱に縛りつけられている紐の長さに余裕がある。
 震えながら、竹弥は、恥も誇りもかなぐり捨て、引き出しについている真鍮の取っ手を、口でくわえて、浮かす。ひんやりと冷たいそれをくわえた刹那、口に錆の匂いと味がひろがる。どこか血の味にも似て、竹弥の胸はしめつけられる。
「うう……」
 あらたな涙が目ににじむ。
 だが、静まることのない肉体に押され、竹弥はさらに身をかがめた。           
 取っ手が横向きに直径に立つようにしてから、苦心して取っ手の根本のところに紐をひっかけるようにしてみる。
 首から垂れる紐には、ぎりぎり、取っ手に引っ掛けるだけのわずかな余裕がある。
「う……ん」
 取っ手を浮かすのも、紐をそこに引っ掛けるのも、手が使えないので口でした。
 傍目はためにはどれほど嗜虐的な光景となっただろう。
 竹弥は、もう一度息を切らすと、さすがに一瞬、躊躇ちゅうちょした。
 しかし、体は激しく訴えてくる。
「ああ……」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ふたなり治験棟

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

朔の生きる道

ほたる
BL
ヤンキーくんは排泄障害より 主人公は瀬咲 朔。 おなじみの排泄障害や腸疾患にプラスして、四肢障害やてんかん等の疾病を患っている。 特別支援学校 中等部で共に学ぶユニークな仲間たちとの青春と医療ケアのお話。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

処理中です...