翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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綱渡り 十四

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 緩急をつけ、動きを弱めると、今度は竹弥がみずから腰をうごかし、刺激をもとめる。
「はぁ……」
 見る者があれば、その浅ましさといやらしさに目を見張ったろう。
「まったく、初心うぶな坊やだと思っていたら、とんでもない淫乱のようだな。これは、調教のしがいがありそうだ」
 杉屋が揶揄からかうように竹弥のうなじに唇をかるく当てる。
 チュッ、と響く音が、場違いなほどにのどかで、いっそう竹弥はいたたまれない。
「うううう……」
 和室には熱気がこもっていった。
 杉屋の体臭も強まる。竹弥自身も、いかに若くとも、全身からほとぼしりあふれる男の臭気はかくしようもない。
「もっと、腰を振れ」
「ううう……」
 命じられことをすべく、竹弥は唇を噛みしめ、悲しい努力をした。
「そうだ、いい子だ。その調子だ」
「はぁ……」
 このとき二人は、まるで協奏するかのように、たがいに同じ目的地をめざして、強力しあっていた。
「うう……ん」
 杉屋の手つきは、ほとんど丁寧といっていいぐらいで、まるでうやうやしく竹弥に仕えているようでさえある。
「そ、そこ……」
「ここか? ここがいいんだな?」
「うん……」
 直接、身体をかさねたわけではないが、ほぼ交合である。
 そして、堰は破られた。
 杉屋が待ちのぞみ、竹弥が恐れていた瞬間がきたのだ。
「ああっ、ああっ、ど、どうしよう? お、おれ、も、もぉ、遂くっ」
 信じられないような下品な言葉が、潔癖な竹弥の口から飛び出る。
「いいぞ、いけ」
 杉屋の舌が、竹弥の胸に浮かんだ汗粒を舐めあげる。極上の美酒のしずくでも味わうように。
「ああ……だ、だけど……俺……!」
 首をつらそうに左右にふる竹弥に、杉屋がささやいた。嘲笑をこめて。
「いいから、そのまま出せ。穿いたままで出せ。後始末はしてやる」
「そんな、そんな……!」
 杉屋の嘲笑の声は大きくなる。
「こんなときまで、本当にお坊ちゃん、いや、お姫様なんだなぁ。今さら恥ずかしがってどうする? もうぐしょ濡れだろうが。いいから出せ、ほら」
「ああっ! や、やめろ! あっ、ま、待ってーー」
 当然、男は待たなかった。意図して、確実な方向へと後ろの紐をたぐり寄せる。
 ぐぐっ―ーと、紐瘤が、竹弥の弱いところに命中したようだ。
「あっ、……ああああ!」
 竹弥は敗北感につつまれつつも、全身をのけぞらせ、かぎりない快感に声をあげていた。

 ああ……いいっ……――。 

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