翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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綱渡り 十三

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 それでも逡巡していると、いきなり杉屋が後ろの紐を、また引っぱり上げた。
「ひぃっ……!」
 扱かれた痛みより、飢えていたところに強烈にあたえらえた刺激が、ついに竹弥を降参させた。
「た、たのむから……して……」
「なにをするんだ?」
 どこまでも杉屋は意地悪い。
「ああ……」
 首をかすかに横に振って苦痛を訴える竹弥の顎を、やさしいような手つきで杉屋がとらえる。
「どうした? どうしてほしい? 言ってみろ」
 噛みしめて紅を増した唇が震える。
「し、して……」
「だから、なにを?」
 ひっく、としゃくりあげてから、竹弥は観念して、かぼそい声を振りしぼった。
「お、俺の、……う、うしろを、さわって……」
 最後の一言は、本当に消え入るようなものだった。
 男を満足させたかどうかはわからないが、今はそれが限界と見たのか、杉屋の手が優しく臀部を撫でた。飼い犬でも撫でるように。
「いい子だ。ちょっとは素直になってきたな。よしよし」
 口調は、呑み込みの悪い飼い犬が、やっと芸を覚えたのを誉めてやる主人のようだ。
 普段なら、そんな言い方を聞きながせる竹弥ではないが、今のこの状況では、もはや逆らうことはできなかった。
「よし。遂かせてやるぞ」
 言うや、杉屋は後ろの紐縄を高く引っぱりあげ、前方の紐縄はやや斜めに低く引っぱる。
 後方には刺激をあたえ、前方には敏感なところには触れないように、という意図であろう。
「ああ……」
 強まった刺激と、それに比例して高まる悦楽に、竹弥はほとんど悶えそうになった。いや、悶えていた。
「ああっ、ああっ、ああ……! そ、そこぉ……!」
 それこそ安っぽいポルノ映画の女優のように、はしたない、浅ましい声をあげてしまう。
 杉屋は、絶妙な角度に向けて前後に紐縄を引く。
「駄目ぇ、駄目! ああ、そんな!」
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