翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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綱渡り 十二

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 胸には絶妙な刺激を受けているというのに、肝心なところは放り出されてしまった。そんな不満のような気持ちがわく。
(ああ、どうしよう!)
 このとき、竹弥はおのれの精神まで墜ちはじめたことに気づいた。
 気づいた瞬間、すさまじい恥辱と、後悔が胸にこみあげてくる。
(ああ、俺……俺、どうしょう)
 右胸を吸われ、左胸も恨めしい男の指でいじられる。だが、下肢への責めは終わってしまった。
 下も攻撃してほしい。とんでもないことを竹弥は思ってしまっていた。それに気づくと、空恐ろしい気持ちになるのだが、責めを求める心の声は止まない。
 もじもじと、浅ましく脚をうごかし、焦れていることを伝えてしまう。
 下半身は完全に無視されているというのに、両胸は延々と責められるのだ。
「はぁ……」
 天上をあおいで吐息を放つ。
 そんな行為が、男に不満を伝えていることに竹弥自身は気づかなかった。
「どうした? どうしてほしいんだ? 言ってみろよ」
「うう……」
 言えるわけがない。
 胸だけでなく、下も触れてほしい、などと、どうして竹弥の口から言えるだろう。
 竹弥は、焦れて、身体をねじるようにして、猫のように、杉屋に我が身をなすりつけていた。身体でもって、〝おねだり〟してしまったのだ。
 杉屋の嘲笑が高くひびく。
「なんだ? なにが欲しいんだ、牝犬、いや猫ちゃん。言ってみろ」
「ああ……」
 察して欲しい、と、もどかしさから怒りをこめて杉屋に上半身をこすりつけてしまう。もはや、理性は消えていた。
 今の竹弥ののぞみは、この中途半端におかれた肉体の熱をはなち、解放することだけだ。
 そのためなら、なんでもする。そんなところまで追い詰められていたのだ。
「どうした、淫乱牝猫。言ってみろ」
「うう……」
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