翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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綱渡り 八

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 一見、滑稽であるが、無残で残酷な光景である。
 彼女の肌が、剝きだしになってしまっている。ズロースまでまる見えだ。
 それでいて上半身は、布につつまれて、その赤い布のなかでうごめくものが見えるのは、人間の姿とは思えなかった。
 実際、不良連中は、年増のパンパンなど人間とは思っていないのだろう。彼女があがけばあがくほど興がのるようだ。
(誰か、止めて……)
 小学生の竹弥にはどうにもできない。それなら、その場を去ればいいものだが、足はやはり動かない。
 中学生の少年たちも黙って見ているだけだ。
「へへへ……いい脚しているな」
 労務者の男など、あきらかに楽しんでいる。
「この金もらったお礼に、お返ししないとな。そうだ。このパンパンが、病気にかかっていないか、検診してやろうぜ」
「そりゃ、いいや」
 わっと不良連中は盛りあがった。
 まさか、と思ったが、なんと彼らは本当に女性の下着をその場で脱がしはじめたのだ。
 竹弥は息を飲んだ。
「キャー、やめて、やめて!」
 上半身を自分のスカートで包み込まれたまま、女は死にもの狂いで脚を動かしたが、飢えた野犬のような悪童たちによって、両脚を開かせられてしまう。秋風に、宍色ししいろの肉付きの良い脚がじたばたと暴れる様は、無残な白昼夢のようだ。
「すげ……」
「見ろよ、これが淫売の***だぜ」
 世にもおぞましい地獄の餓鬼のような連中の笑い声が、戦後の傷跡もまだ癒えぬ地にとどろくのを、ただ呆然として竹弥は聞いていた。
 女のくぐもった悲鳴もとどろく。
 竹弥自身も内心で悲鳴をあげていた。
「へへへへ。俺も見せてもらおうかな」
 ふらふらと労務者が行く。
「お、俺たちも行ってみないか?」
「……やめようよ。警官に見つかったら怒られるよ。それに、あいつらの仲間だと思われたら嫌だ」
「うん……」
 それなら見てないでさっさと立ち去ればいいものを、やはり二人の少年はそこにいる。
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