翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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綱渡り 六

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「ううっ、ううっ……!」
 甘い責め苦にいつしか下肢は燃えるようだ。意志でもっても理性でもっても抑えきれない若さは、萌えて下着の形を変えていく。
 ふくらんだ布の先端を指でつついて男は嘲笑った。
「すっかり濡れているな」
「う……!」
 羞恥と悔しさに竹弥は頬を燃やした。
 それでも腰は、あてがわれた紐縄の刺激をもとめて揺れてしまう。
 杉屋は悪童のように、にんまりと笑い、梨園の名花が散らされる様を楽しんでいる。 
「ああ……! こんな……こんなこと……」

 恥辱に気が遠のきそうになった一瞬、竹弥の朧げになった脳裏に、奇妙な光景が展開した。
 それは忘れていた過去の記憶だった。
 小学生の頃。学校帰り、中学生の不良たちがたむろしている空き地の前をとおりかかったとき、甲高い女の声が聞こえた。
 それが派手な化粧にけばけばしい装いで、〝パンパン〝と呼ばれるたぐいの女だということは、小学生の竹弥にもすぐわかった。
「いいじゃねえかよ、見せろよ」
「やめなさいよ! 子どものくせに、なにやってんのよ!」
 最初は、ふざけ合っているのだと思った。中学生たちは五人、女は一人。皆、声には多少の笑いをふくませていたように思えた。
 ふと気になった竹弥が、好奇心もあって空き地の前で足を止めていると、だんだん女の声が大きくなってきた。
「駄目だって言っているでしょう!」
「気取るなよ、パンパンのくせに。どうせアメ公のを散々咥え込んでいるんだろう?」
 ひときわ身体の大きな少年の揶揄には、中学生の言葉とは思えぬほどの毒がこもっていた。
「なんだって!」
 さすがに女は怒った。歳は二十代後半ぐらいだろうか。この頃の感覚では、若い娘とも呼べない。娼婦としても盛りの時期は過ぎているのだろう。枯れかけた花の哀愁が、濃い化粧と、煙草の吸い過ぎか、ややかすれた声にしのばれる。
「ババアのパンパンのをおがんでやろうっていうんだぜ、ありがたいと思えよ」
「な、なんてこと言ってんだよ! この不良!」
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