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綱渡り 三

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 弱いところを責められれば、ひとたまりもない。男という名の身体を持ってしまった不運だ。
「いい加減、聞き分けよしくていろ」
 脚に空気を感じる。当然、腰にも臀部にも。灰色のスラックスが完全にうばわれた。畳の上に投げ捨てられたかたまりは、布の骸のようだ。
「うう……」
「白い下着が、おまえには似合っているな。清潔で初々しくて。……ふふ。感謝しろよ、ちゃんと新しいのを穿かせてやったんだぞ」
 羞恥に胸が痛くなる。
 この室で辱しめられたあと、風呂は使っていない。汚れを、意識をうしなっているあいだに杉屋に清められたのかと思うと悔しい。だが、まだ生々しい感触と肉体を濡らした記憶も鮮明だというのに、あらたな凌辱を受けることになるのかと思うと、竹弥は絶叫したくなった。
「は、はなせ! はなせったら! 俺にさわるな!」
「ああ、さわらないよ」
 あっさりと返され、竹弥は一瞬、拍子抜けした。
「今度は俺はさわらない。それが今日のお仕置きなんでな」
「な……なに……?」
 動揺し狼狽している竹弥を見て、杉屋は笑った。
「足を開け」 
「え……? あっ!」
 足の間に紐が走る。
 今の竹弥は、上は厚手の上着をしっかりと着込み、下は剝きだしの白い足に、やはり白い靴下。下着は奪わないでくれたが、油断などできない。しかも手は後ろで縛られている。
「あっ、は、はなせ!」
 慣れた手つきで、竹弥の腕は後ろで組んでいるような形で縛りあげられる。女ものの帯のような華やかな紅色の帯紐で、竹弥は両腕を完全におさえこまれてしまった。
「白い肌だ……正月の餅のような白さと艶やかさだな」
「ん……!」
 不本意きわまりないが、竹弥は杉屋の胸に顔をうずめるようにさせられ、臀部を撫でられた。
「や、やめろ……!」
「いい子だ。大人しくしていろ。これから毎晩、ここをいじってやるぞ。ここで遊ぶのが楽しくてたまらない、という身体に造り変えてやるからな」
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