翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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綱渡り 二

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「見ていろ」
 床の間の上には、小さな滑車のようなものが取り付けられていることは竹弥もすでに知っていた。そこへ、杉屋は紐先を通す。
 竹弥は見ていて頭痛がしてきた。血はますます引き、ますます背は凍る。
 床の間の上から、鴨居へと、帯紐が揺れる。
 垂れて、宙に曲線を描いている紐が、竹弥にはとてつもなく恐ろしく、おぞましい拷問具に見えてきた。事実、それは世にも残酷で淫靡な責め具となるのだ。
「よし。出来たぞ。綱渡りさせてやる。楽しいぞ」
 咄嗟に、無駄だとわかっていても竹弥は逃げようとした。
 畳に座りこんだまま、後退り、身をよじったが、そこまでだった。背後から抱きしめられるようにして、強引に上半身を引き上げらてしまう。
「おまえの服は、どれも上等品だな。三越あたりのものだろう?」
 夜だったこともあって、シャツの上には上着を羽織っていたが、その上質な布地ごしに、竹弥の肩に顔をうずめて、杉屋がどこかうっとりとしたように言う。
 事実、竹弥の着ているものはどれも一流の百貨店で買ったものばかりだ。父も兄も着道楽なのは、やはり稼業柄だ。着るものにかける金を惜しまない性分の父や兄を見て、竹弥は自然に生活習慣としてそういった考えを受け入れていた。安いものを買うための努力などしたことはない。
「本当に、おまえは坊ちゃん育ちなんだな」
 こんなときだというのに、杉屋の声音には感心と満足がにじんでいる。
 それでも、困惑している竹弥から杉屋は着衣を剥いでいく。 
「よ、よせ!」
 杉屋の目的は、下半身で、スラックスを脱がそうとする。竹弥は不自由な身体で抗った。
「は、はなせよ! さわるな!」
「こら、暴れるな。殴るぞ」
 揶揄をふくんだ声がいっそう竹弥の神経をひっかく。
「殴れよ! あっ」
 股間にはげしい痛みがはしる。杉屋の手が、竹弥の中心を握りつぶそうとしている。
「や、やめ……」
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