翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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紫縄遊戯 八

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 ちいさな瘤紐をあてがわれていたときの、微妙な刺激とはまるで違う、はるかに熱を持った侵入物が、竹弥を追い詰めてくるのだ。
「はぁっ……ああっ、」
 竹弥もまた、自分の意識を追ってくるものを、ただ待っているだけではすまなくなってきた。
 男の巧みな動きが、竹弥の内に火を灯す。灯った火は、あおられ、大きくなっていき、竹弥の全身を焦がす。
(だ、駄目だ――!)
 憎いのは、杉屋ではなく、自分を裏切るもう一人の自分だ。
 だが、竹弥がどれほど両足を踏ん張ってこらえようとしても、自分のなかのもう一人の自分には勝てない。なぜなら、それは、裏表も偽りもない、正真正銘、真実の自分だからだ。
(ああ、来る!)
 竹弥は大きくのけぞった。白い喉元や胸が反り、断末魔のような喘ぎがひとつ漏れると、もう後戻りできなかった。
「ううっ……、あ、ああ、そ、そこ、そこ!」
 ついに、竹弥は杉屋を追う側になっていた。
「そ、そこを、もっと……! は、はやくぅ!」
 正気なら到底口に出せない言葉が、ほとんど無意識に漏れてしまう。
「まだ、駄目だ」
「うー……」
 畳の色も、紫房の色も、止むことのない滴りに、色を変えていく。
「ああ、いや! いや! も、もう無理ぃ! た、たのむから、ほ、ほどいて! ほどけよ!」
 前方の根元は、痛くないぎりぎりの強さ加減で紐で縛られている。
「まだだ。まだ、我慢しろ。聞き分けない坊やには、躾が大事だからな」
 杉屋がいかにも強姦魔のように、にやにやといやらしい残酷な笑いを浮かべて告げる。
「ああーー!」
 その後も、驚くほどの執拗さとある種の忍耐力をもって、杉屋はさんざんに竹弥を追い詰めてきた。
「くぅ! い、嫌! ああ、も、もぉ、駄目だぁ!」
 前方の芽も茎も双果も、後ろの蕾も、嬲りぬかれた。
 脳髄を焼き尽くされるような陰険な責めに、竹弥は人であることを諦め、ただ欲望だけを追い求めて泣いた。

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