翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

文字の大きさ
上 下
85 / 225

紫縄遊戯 七

しおりを挟む
 それでも、その真珠色の前歯が、堕落していくおのれ自身を戒めるように、時折唇を噛む様子はなまめかしいの一言である。
「うう……ん」
 だが、どれほどあがいたところで、二十歳の春のさかりの肉体はもろい。
 若い身体は、心より一足先に敵の手に落ち、逆に主を追い詰めてくる。
 はらりと、下肢を嬲っていた紐の一本が落ちたことに竹弥は気づいた。
「はぁー!」
 全身が跳ねたのは、とうとう杉屋が、後ろの花まで侵略してきたせいだ。
 指を一本入れられ、竹弥は絶叫した。
「ああっ、ああっ、あああっ!」
 すでに幾度かそこをいじられてはいたが、やはり、慣れることなどできない。
 男にとって、許してはいけない禁忌の場所をおかされる恐怖に竹弥は身悶えした。
「や、やめろぉ……!」
「怯えるな。……指一本ぐらい、もう平気だろう?」
「ううう……」
 竹弥が首を横に振るたび、白いうなじや鎖骨に玻璃をくだいたような汗が散る。
 竹弥の屈辱と怒りのにじんだその粒が、皮膚に当たれば、当たった方も傷つき血が流れそうだが、それで物怖ものおじするような男では、杉屋はない。
 杉屋の舌は、よろこんで竹弥の項を舐めあげ、銀色の汗粒を丹念に吸う。
「うう……ん!」
 頬をつたう、終わることのない竹弥の涙も吸いとっていく。
 これから竹弥が流す汗も涙も……恥ずかしいしたたりも、すべてこの男の舌に吸われていきそうだ。竹弥の燃えるような憎悪も怒りも哀しみも、すべてこの男は受け取って、吞み込んでいくつもりなのだろう。
 竹弥は、自分が本当に杉屋宗司という男の所有物になってしまいそうな恐怖に眩暈めまいがした。
 だが、意識はさえざえとして、身体が受ける感触を自覚せずにはいられない。
 しかも、今やもう、竹弥は凌辱行為をただ受け身で過ごしているだけではないのだ。
「はぁ……」
 背後の異物感はいつしかやわらぎ、そうなると、後ろからくる刺激も竹弥をますますそそのかす。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ふたなり治験棟

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

朔の生きる道

ほたる
BL
ヤンキーくんは排泄障害より 主人公は瀬咲 朔。 おなじみの排泄障害や腸疾患にプラスして、四肢障害やてんかん等の疾病を患っている。 特別支援学校 中等部で共に学ぶユニークな仲間たちとの青春と医療ケアのお話。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

処理中です...