翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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紫縄遊戯 三

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「うう……!」
 額に汗がにじむ。歯を食いしばってはみたももの、じきに堪えられず、竹弥は小さく悲鳴をあげる。
 その様は、杉屋という奏者が、竹弥というたぐいまれなる名器をつかって、世にもたえなる音色をかなで、はじきだしているようだ。
 実際、前後二本の紐をあやつる杉屋の手つきや指先の動きは、一流の音楽家のように繊細かつ巧みで、この杉屋宗司という残酷な侵略者のどこに、これほど意外なまでに美しい手つき、動作が取れる感性や品性があったのかと、竹弥が正気なら驚いたろう。だが、今の竹弥はそれどころではない。 
 二本のゆかしい紐が竹弥のもっとも感じやすい二つの箇所に食い込むと同時に、精神も、魂も、きしまんばかりに拘束されてしまう。
 その細い紐は、今や強靭な不断の縄となって、竹弥の身も心も雁字搦がんじがらめに縛りつけてくるのだ。
「あっ、や、やめろぉ! も、もぉ、よせったら!」
 前後両方の紐をもてあそばれ、竹弥はのけぞった。
 それでも終わることなき紐責めに喘ぎ、首を左右に、いや、いやと振りつづけ、頬を無念の涙で濡らしつづけるしかない。
「おっ、どうしたんだ? 二十歳にもなっておまえ、お漏らししているのか?」
「え……? あっ、ああっ!」
 戒められていても、こらえきれるわけもなく、竹弥の中心からしたたるものが、杉屋の目を楽しませた。
 自身の両股の間から垂れる銀の糸のようなしずくが、畳のうえに、浅ましい小さな染みを作るのを見下ろして、竹弥は羞恥に嗚咽した。
 ぽとり、と音なき音がたち、おなじく中心から垂れている紫房の上にもしたたり、房の色がほのかに変わっていく。
「ああ……!」  
 貴公子の落花無残な崩壊に、杉屋の笑い声が和室に響く。
「良家の坊ちゃんが、はしたない。おいおい、紐や畳を汚してしまって、おまえ、この後始末はどうするんだ?」 
「ううっ……」
 いたたまれなさに震える竹弥の様子は男の目にどう映ったのか。
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