翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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淫夢炎上 九

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 竹弥は頭がくらくらしてきた。
 ――素質。杉屋が言うのは、被虐の素質ということだろうか。
 博識な友人が話していた、マゾッホの小説の主人公のように、いたぶられることに悦楽を見いだす異常な嗜好が自分にはある、ということだろうか。
 竹弥は自分の心が砕ける音を、たしかに聞いた気がした。
「いいんだな、こういうのが?」
(ち、違う……!)
 言葉とは裏腹に、下肢の若芽はますますきざしていく。
(ああ……!)
 羞恥に全身がふるえる。
(ああ、どうしよう! ああ、そんな、そんな!)
 男でありながら、男の欲望の対象にされている今のこの状況だけでも耐えがたいというのに。さらにその上、被虐をのぞむという変態的な欲望がみずからの内にひそんでいたなど……。それを引きずりだされ、こうして杉屋に指摘されてしまった。
 もはや竹弥には耐えられない。 
(ああ、嘘だ! こんな、こんなこと……)
 あっていいわけがない。
 パシャリ――。
(ああ!)
 浅ましい姿が写真に収められていく。
 竹弥は発狂しそうになった。
(駄目だ! 駄目だ! いやだ……!)
 柱がゆらぐかと思うほどに竹弥はあばれていた。
「おい、こら、あばれるな」
 うっとうしそうに男は言うと、いきなり竹弥の中心を握りしめた。聞き分けのない子どもに罰をあたえる父親のような顔で。
(ひっ!)
 痛みにきつく目を閉じた竹弥に、杉屋が投げつけてきたのは言葉の打擲ちょうちゃくだ。
「俺を怒らせるなよ。これ以上、我がままな真似をするのなら、この写真をすべておまえの家族や友人、知り合いに送りつけるぞ」
 あまりのことに竹弥は目を剝いた。
「そうだ。俺はおまえの交友範囲はすべて知りつくしているんだ。大学の友人や講師、知り合いにも送ってやる。いや、そんな生ぬるいことでなく、大学の校門や壁に貼りまくってやるぞ」
 竹弥は本当に失神しそうになった。
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