翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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淫夢炎上 八

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 竹弥は絶望に倒れそうになったが、腕を縛り上げている布紐がゆるしてくれない。
 シャツははだけられ、胸はほとんどあらわになり、剝きだしの下半身を覆うのは古代紫の紐のみである。竹弥の呻きに合わせて、紐先の房が揺れる。
「いいぞ、もう一枚」
 白蝋のような竹弥の肌が震える。
 胸から腰、臀部と、ほっそりとした身体は、しなやかでいて芯の強さを思わせるものだが、今は男の仕打ちにただ震えるしかない。
 パシャリ――! 
 心を凌辱するような音が響いた。
 転落していく恐怖に慄きながら、ひたすら竹弥はこの拷問が終わるのを待っていた。
 堕ちていく。ひたすら堕ちていく。それを思うと、視界が漆黒の闇に染まっていく。
 だが、やがて――、竹弥は気づいた。

(あ……)
 まさか、という想いで、もう一度我が身をかえりみてみた。
 そんな、まさか、とまた思う。
 だが、自覚しはじめた感覚は事実だった。
(そんな、そんな、まさか)
 身体が震えた。
 信じられないことに、全身が凍り付く屈辱に、いったん熱をうしなっていたはずの器官が、あらためて熱を帯びはじめたのだ。
(ど、どうしよう! ああ、どうすればいいんだ!)
 隠すものなど何もなく、竹弥の動揺と変化は、あますところなく憎い相手の目に晒されてしまう。
「うう……、ううう!」
 猿ぐつわをされている口から、苦しい叫びがもれる。
 とうとう、もはや逃れられないほどにまで、身体は追い詰められてきた。
(ああ……!)
 向かいあう男の目にも明らかになったのだろう。
 男の笑い声が鼓膜を突き抜ける。
 全身があまりの羞恥に発火しそうだった。
 だが、そこでまたパシャリ、と残忍な音が響く。嘲笑も。
「最高だな。やっぱりおまえには素質があようだ」
 
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