翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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淫夢炎上 三

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 もともと潔癖で、根が生真面目な竹弥は、男子寮で過ごしていたときも、男同士の酒のうえでの話でも、性的なことはことさら避けていた。周りも、竹弥がまとう清浄な風に当てられるのか、ひそひそにやにやと教室や廊下の片隅で猥談にふけっていても、竹弥の姿を見ると話題を変えてしまう。周囲の学生たちは、竹弥にたいして、気品ある淑女に取るような態度を取っているのだ。竹弥の生来の麗質と清潔さが、直情的な少年たちであっても圧倒させられるものを放っているのかもしれない。
 そんな清廉な竹弥が、頬を真っ赤にして卑猥な問いへの答えを吐きだすと、杉屋はのけぞった。
「そりゃ、また淡泊なことだな」
 杉屋のわざとらしい嘲笑に戦慄しながら、閉じたまぶたから温かいものがこぼれて右頬が濡れていくのを竹弥は感じた。
「警察でもそう言えよ。訊かれた僕は、正直に答えました。警察官らも言うだろうな、坊や、あっさりしているね、とな」
 さらに耳を覆いたくなる嘲笑を受け、竹弥は唇を噛みしめる。
「ようし、これから俺が仕込んでやるぞ。俺の調教を受けたら、身も心も本物の淫乱に生まれ変わるからな。そうなったら、そんなもんじゃすまないぜ。それこそ、もう本当に一日じゅうたまらない気持ちで過ごすようになるぞ。やっても、やっても物足りなくて、始終、そればっかり考えてしまう身体に変えてやるよ」
 あまりのおぞましさに硬直している竹弥を見て、杉屋は一瞬、言葉を止め、口を閉じた。
 ふたたび口を開くと、竹弥を驚倒させるような言葉を吐いた。
「おまえはこれから、本当に正真正銘の淫乱に生まれ変わるんだよ。俺がおまえをそう変えてやる」
 嘲るような調子もなく、男は妙に真剣な顔で告げる。
「おまえは、今日から俺の可愛い男娼になるんだ」
「ひっ!」
 杉屋の手つきは、うやうやしいと言ってもいいようなものだった。
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