翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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淫夢炎上 二

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 下から己の醜態を見上げる男の顔は、陰険残忍なものをただよわせながら、それでいて、やはり美しいといえるのだ。いっそ不思議である。どれほど整った顔だちでも、心がゆがんでいれば、器量は落ちて見えるものだと、高名な脚本家が言っていたが、ふしぎなことに、この男には当てはまらない。 
 いや、むしろ残酷であればあるほど、陰険であればあるほど、この男は奇妙な魅力を発揮してくるのだ。それこそ悪の魅力というものかもしれない。
 そんな邪悪なものに魅入られてしまってはいけない。竹弥はみずからを叱咤する想いで、身体をよじった。
「はなせよ!」
 手首や腕を戒めている紐は、よく見ると紅に白がまじっており、二色がからまりあっている。竹弥の自尊心がふるえるたびに、頭上で幾何学的な模様が波打つ。
「おまわりには、こう言え。犯人は、僕のを擦りながら、僕に『一日何回するんだ?』としつこく訊いてきました、とな。ほら、答えろよ」
 竹弥は頬が烈火のごとく燃えるのを感じた。
 怒りと憎悪に目から火花が散りそうだ。
「へ、変態野郎! ……あうっ!」
 親指と人差し指で、先端をきつめに摘まれてしまい、竹弥は背をまるめた。
「ほら、言え」
 そんな恥ずかしいことは口にできない。いや、いや、と苦痛に眉をゆがめながらも拒絶する竹弥に、男は冷笑を向けた。
「ほら」
「あああああっ」
 繊細な箇所に、さらに強い刺激を加えられ、竹弥は今度はのけぞる。
「あうっ! あううう! は、はなせ! ……ああ、はなしてくれ!」
 食い込んでくる二本の指の触感が、竹弥を追い詰めるのだ。
「言わないと、ずっとこのままだぞ。ほら、言え、一日、何回やっているんだ?」
「ううううっ!」
「ほら、言え」
「ああ、あああ!」
「悶えてないで、言えよ」
 執拗な追究に、竹弥はとうとう耐えきえれなくなり、誰にも伝えたことのない恥ずかしい青春の秘密を、震えながら唇からこぼした。
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