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淫夢炎上 一

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 笑いながら、なだめるように男は竹弥の右胸の先端に接吻する。
「ああ……」
 軽く、ただ唇をつけただけだが、それがたまらない刺激となって竹弥をさらに悶絶させ、動揺させる。
「本当に、おまえは初心うぶだな。役者の世界になじんでいるのだから、もっと発展家かと思ったら、てんでねんねだな。それでいて、欲は強い方だろう、おまえ?」
 返す言葉は出ず、ただ必死に首を振っていた。
 自覚はあるが、竹弥は晩生おくてだ。異性は遠い存在、というより、うとましい存在で、深くかかわりあいたいとは思わなかった。まだ。
 それより「欲が強い」という言葉の方が、こんな状況でも竹弥の元来、潔癖な精神をひっかく。
「なんだ? 事実だろう? おまえ、欲しがりだろう? 一晩に、何回ぐらい、ここをこするんだ?」
「はうっ……!」
 いきなり、握りしめられて、竹弥は辛さに狼狽えた。
「綺麗な色だな。まだ知らないんだな」
 それは、もはや竹弥の身体の一部ではなく、杉屋のものにされていた。
「あっ、よせ」
 杉屋は膝を折ると、ふたたび、竹弥の心を代弁しているような、繊細でまだ未熟な象徴を両手でつつみこみ、すくいあげるようにして先端に接吻をした。
「うん……んん!」
「言ってみろ、一日、何回ぐらいこすってるんだ?」
「し、していない!」
 言うだけ無駄だとはわかっていても、竹弥はそう吼えたてた。
 だが、燃えるような頬の色が、竹弥の本心を物語っている。
 しないわけがないのだ。通常の健康な男性なら、当然するべきことだ。だが、それをこの恨み深い男に推測されると、背筋を虫が這うような、たまらないおぞましさに身体がふるえる。
「答えろ。一日、何回こすっているんだ?」
 ニヤニヤと笑いながら、杉屋がさらに問う。 
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