翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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朝桜心中 八

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「うう……」
 竹弥は見るのが恐ろしくて、目をつむったが、相手はそれで許すような男ではない。
 竹弥の頬に、竹弥自身がはなった恥辱のしたたりをなすりつけてきた。
「ああ……!」
 不快感に顔をそらそうとするが、首をおさえこまれるようにして、動きを封じられ、そのあともじっくり時間をかけて、嬲られた。
「よ、よせ、もう、やめろ……!」
 頬、首、胸と、杉屋の舌が這いまわる。淫らな音をたてながら、竹弥の身体をあますことなく舌で凌辱する。
 おぞましさに竹弥は吐き気がした。
 くらくらと目がまわり、頭痛がし、一瞬、自分がなにをされているかも、置かれた状況も忘れて、ぼんやりしてしまっていた。
 心が、現実を受け入れきれず、身体から逃避しようとしていたのかもしれない。

 くすくすくす……。
 はははははは……。

 どこかで、誰かが笑っているような声が聞こえてきた。おぼろになっていた意識が、はっきりと覚醒したのは、男の指が背後に伸びて来たときだ。
「あっ、よ、よせ!」
「じっとしていろよ」
 ゆっくりと、だが、確実に、背後を割る感触にふたたび竹弥はあわてた。
「やめろ! な、なにをするんだ!」
「うるせえな」
 めんどくさそうに杉屋が言う。
「なにをするもなにも、ここを、可愛がってやるんだよ。いいか、動くなよ」
 膝をついて、熱心な顔付きになると、両手をつかって、杉屋は竹弥の後ろ園を覗き込んできた。
「ば、馬鹿野郎! はなせ!」
「こら、いい加減にしないと、お仕置きするぞ」
 言ってから、杉屋の平手が、竹弥の太腿の上をたたく。
「うう!」
 理不尽きわまりない言動に、竹弥の悔しさは倍増する。
 だが杉屋は頓着することもなく、少年と青年の端境期はざかいきにある竹弥の、後ろの園に咲く小さな蕾を検分する。
「や、やめろ! 見るな!」
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