翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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鏡責め 三

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 息がうまくできず、酸欠の金魚のように口をぱくぱくあけるしかない。
「ほう」
 杉屋が驚愕半分、面白さ半分というようにつぶやいて笑う。
 低い、嘲笑の声が薄闇にひびく。
 竹弥はあらたに出そうになった悲鳴をかろうじて飲み込んだ。
 鏡がすべてを映しだして見せてくれた。
「あ……」
 頬が燃える。喉がひきつる。
「おまえ、こういうのが好きだったのか?」
「ち、ちがう!」
「ちがうのか、これは?」
「はぁっ!」
 杉屋の太い人差し指が、竹弥の繊細な象徴の裏側を、ゆっくりと撫でる。
「ううっ!」 
 刺激とも呼べないようなかすかな接触が、竹弥をのたうたせる。
「ひぃっ、ひぃっ、ひぃぃぃ! やめ、やめっ!」
 動くと縛られている手足に圧がかかるが、それでも、のたうたずにいられない絶妙な刺激を、男は、未熟な芽にあたえつづけた。
「ああっ!」
 杉屋は一度したように竹弥のまえに膝をつくと、熱を放ちはじめた若さの象徴を両手でいつくしむようにさすり、そっと、息をかけてくる。
「ううううっ!」
 指よりはかない吐息の刺激を受けて、竹弥は歯をくいしばった。
 そして、これから起こることを予想して、背に雷を受けた気分になる。
「はぁっ……!」
 ふたたび、竹弥自身が、憎い男の口腔にしまわれてしまう。
「そ、そんなこと……!」
 今回は、背後に象牙の小さな責め具があることも忘れられない。
「ああっ、ああっ、あああああっ!」
 象牙の道具、樫の椅子、桐細工の鏡面、杉屋の舌。さらに壁にならぶ文楽人形の首、首、首。暗い蔵も電球も、すべてが竹弥を責めさいなむ。ここは竹弥にとって生きたまま落ちる淫獄にほかならない。
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