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鏡責め 二

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 不様だ。醜くて浅ましく、このうえなく淫らな生き物が目の前で泣いている。
 暗い蔵内で、電球のとぼしい明かりに晒されている肌は、美貌を謳われた母親ゆずりの肌理きめこまやかな色白である。そんな、男にしてはひどく白い脚や太腿、細い腰、引き締まった胴、すべてが痛々しいほどに剝きだしにされて映し出されている。
 蔵の闇に、季節をまちがえて早くも梔子くちなしの花が咲いたかと思わせるような夢幻的な光景に、唯一、白い肉体の中心に茂る漆黒のくさむらと、その中心の、初々しく、若いというより、おさないような芽が、生々しい性と、竹弥のわずかながらもある男性性を示しており、あたりにほのかな性臭がたつ。
 幻想的な美しさのなかに、やはり雄の生と性が感じられ、いっそう鏡面に映しだされた肉体を麗しくも淫らに見せるのだ。
 どれほど美しく清純な男でも、女でも、人のからだというのは、すべてを見てしまうと、どこか生臭く、どこか醜いのだということを、竹弥は思い知らされた気分だ。
 いたたまれなさに新たな涙をながした。
 羞恥にむせび泣く竹弥の背後にまわった男は、そっと、竹弥の首筋に己の唇をあてた。まるで神聖な儀式のはじまりを告げるような、優しくおだやかな動作で。
 それは、たしかに竹弥にとって、残酷で恐ろしく、それでいて甘美な儀式だった。

 そして――、
 時間にしては、ほんの数分か、もしくは数秒だったかもしれないが、目に入った己の身体が、さらに竹弥に強烈な打撃を与えることになった。
(あっ……、)
 最初はとうてい信じられなかった。
 鏡に映っている男と、自分は別人だったのだという藁にもすがるような考えすら浮かんだ。
 だが、それが現実なのだと、否応なしに、身体の中心に生まれた熱が知らせてきた。
 涙でかすんだ視界に入るその異常なものを見ていると、竹弥は新たな恐怖に悲鳴をあげそうになった。いや、ほとんどあげていた。
「あっ、ああっ……!」
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