翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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暮春に 六

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 男が男を犯そうとし、その行為のなかで、犯す男が、犯される男にたいして甘えるような仕草をしているのだから。
 こんな性技や手管てくだに負けてはいけない、と思うものの、執拗で巧妙な杉屋の指戯と、ありうべからざる情のこもった態度に、竹弥は自分でも信じられないような声をあげていた。
「はっ、ああっ、あああっ、だ、駄目ぇ、そ、そこ……、やめて!」
 それこそ時代劇の遊女があげるような声をあげてもがいている自分が信じられない。我にかえった竹弥は戦慄した。 
「あっ、ふぅ……」
 今度は左の乳首を吸われた。
 さらに杉屋の手は、竹弥の後ろの園に這いよってきた。
「や、やめろよぉ……!」
「息を吐け」
「い、いやだ! よ、よせ!」
 先ほど以上に強い圧迫感をともなって、一瞬、冷たい感触が竹弥を襲う。
 つぎに温みを感じはじめて、竹弥は衝撃にふるえつつも、背後に感じているのが、杉屋の指――おそらく人差し指――だと気づいた。全身の血が逆流しそうだ。
「あっ、やめっ、やめっ、やめろぉー!」
 すでに湿りを与えられているところに、あらたに、ぬめったものを多く付け足され、竹弥は堪らなくなって、まるで駄々っ子のように地団太踏むように足で床を叩く。
「よしよし、可愛いぜ」
 相手は笑っているだけだ。
「ほうら」
 ずぷり、と男の濡れた指が、さらに蕾を割る。
「はあぁ! あっ……」
 気が遠のきそうになる。
 これから自分がなにをされるか、竹弥は想像して本当に失神しそうになった。
 竹弥の周囲の美しい役者志望の男たちがばらまく芸能界や演劇界のひそかな艶聞、男子寮で囁かれる下卑た噂。否応なしに知識はある。
「ひぃっ!」
 竹弥がのけぞったのは、背後にまさわれた指がさらに深く竹弥を穿うがったのとほぼ同時に、前で膝をついている杉屋が、竹弥のまだ初々ういういしい分身を口に含んだせいだ。
「あ、そんな、そんな! 駄目、だめだぁ……」
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