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暮春に 二
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だが、数秒後には、男の異常な目的がおぼろに察知され、竹弥はふるえた。
「ひっ!」
竹弥はひりつくような悲鳴をあげていた。
臀部に、奇妙な感触が走ったのだ。
「せっかく、この椅子を使ったのだから、これもやってみないとな」
男はおもしろそうに竹弥の狼狽を見ている。
「な、何しているんだよ!」
「うるさいな。じっとしていろよ、動くと本当に危ないからな。おまえ、ちょっと立っていろ。立てるだろう?」
命じる声は、場違いなほど呑気なものだった。
「な、なんなんだよ!」
男に言われたから、というより、下から迫ってくる異物の感触がおそろしく、竹弥は自ら腰に力を入れて、よろよろと立ちあがった。
どうにかして逃れられないかと周囲を見わたしたが、腕はしっかりと縛り上げられているうえに、武器となりそうなものもない。
壁にならぶ人形たちの首が、まるで自分の窮状を笑っているようで、竹弥はぞっとした。
この首たちは、先ほどから竹弥の惨めな姿を見ていたのだと思うと、愚かしい八つ当たりだとわかってはいても、人形にたいして恨みがわく。
一瞬、陀羅介と呼ばれる首と、目が合った――気がして――竹弥は硬直した。
陀羅介とは、嫌味な憎まれ役につかわれる首である。その首が、竹弥の怯えた顔や、あらわにされている身体を、野次馬めいた好奇心で嘲笑っているような錯覚がしたのだ。
(なんだよ、見るなよ! 馬鹿野郎!)
そんな自分でも馬鹿々々しいと思うようなことを考えていると、いつの間にかすっかり作業を終えた杉屋が、嬉しそうに告げた。
「ほら、準備完了だ。座ってみろ」
そのときになって、はじめて竹弥は自分の嫌な予感がみごとに的中したことを知った。
「こ、これは……!」
椅子の中央より、やや後ろから、突き出ているものは……、この蔵に入ってすぐのときに見せつけられたものと同様のものだった。
「なんといっても今日は初日だからな。なるべく小さいものにしてやったからな。感謝しろよ」
「ひっ!」
竹弥はひりつくような悲鳴をあげていた。
臀部に、奇妙な感触が走ったのだ。
「せっかく、この椅子を使ったのだから、これもやってみないとな」
男はおもしろそうに竹弥の狼狽を見ている。
「な、何しているんだよ!」
「うるさいな。じっとしていろよ、動くと本当に危ないからな。おまえ、ちょっと立っていろ。立てるだろう?」
命じる声は、場違いなほど呑気なものだった。
「な、なんなんだよ!」
男に言われたから、というより、下から迫ってくる異物の感触がおそろしく、竹弥は自ら腰に力を入れて、よろよろと立ちあがった。
どうにかして逃れられないかと周囲を見わたしたが、腕はしっかりと縛り上げられているうえに、武器となりそうなものもない。
壁にならぶ人形たちの首が、まるで自分の窮状を笑っているようで、竹弥はぞっとした。
この首たちは、先ほどから竹弥の惨めな姿を見ていたのだと思うと、愚かしい八つ当たりだとわかってはいても、人形にたいして恨みがわく。
一瞬、陀羅介と呼ばれる首と、目が合った――気がして――竹弥は硬直した。
陀羅介とは、嫌味な憎まれ役につかわれる首である。その首が、竹弥の怯えた顔や、あらわにされている身体を、野次馬めいた好奇心で嘲笑っているような錯覚がしたのだ。
(なんだよ、見るなよ! 馬鹿野郎!)
そんな自分でも馬鹿々々しいと思うようなことを考えていると、いつの間にかすっかり作業を終えた杉屋が、嬉しそうに告げた。
「ほら、準備完了だ。座ってみろ」
そのときになって、はじめて竹弥は自分の嫌な予感がみごとに的中したことを知った。
「こ、これは……!」
椅子の中央より、やや後ろから、突き出ているものは……、この蔵に入ってすぐのときに見せつけられたものと同様のものだった。
「なんといっても今日は初日だからな。なるべく小さいものにしてやったからな。感謝しろよ」
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