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侵入 五

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 誰が言うものか! 恥ずかしさに耳朶まで燃やして、竹弥は唇を噛んだ。
 本気でか、振りなのか、男はムッとしたような顔をつくる。
「お、なんだ、生意気な餓鬼だな。わかった、わかった、じゃ、そうやって意地を張っていろ。いつまで続くかな」
「ああっ」
 ふたたび、竹弥の分身は心地良いぬくもりに包まれてしまう。
(ち、畜……しょ……う)
 男は頭部をうごかし、己の口腔で竹弥をしごく。
「あっ……」
 ぬくもりが消えたかと思うと、熱い舌先で先端を突かれる。
 濡れた水音のような響きが蔵にこだまする。そして竹弥の喘ぎ。
 椅子の反った部分が床にこすれる、じれったいような雑音は、竹弥のもどかしさを示しているようだ。
「ううっ、は、はなせ! や、やめろぉ……」
 竹弥は男の異常なほどの粘着的な舌技に身悶えした。
 男が、徹底的に自分を追いつめ、らして、自尊心よりも悦楽をえらぶように仕向けようとしていることを、おぼろげながらも竹弥は理解しはじめた。
「ぐぅぅぅぅ……!」
 長い、拷問のような愛撫の時間がつづく。
 まだ肌寒い季節に、ほとんど全裸に剝かれいるというのに、竹弥は額にも背にもいつしか汗を感じていた。
 蔵内は竹弥のかもしだす熱気と、男の匂いで、ほとんど蒸れるほどに温度が上昇している気が、竹弥はした。
 涙にかすんだ目に、揺れる縄だけが見える。
 土色つちいろがかったその二本の縄を、竹弥はぼんやりと涙でかすんだ目で見ていた。
「はぁっ……」
 また、だった。ぎりぎりまで追い上げられ、あと、もう少し、あと、もうほんの少しで、というところで、突き落とされる。それを幾度、経験させられたろうか。
 焦燥感に気が狂いそうだった。
「ほら、どうだ? 言えよ。一言だ。遂かせてください、そう言えば許してやるぞ」
 あさましく濡れた唇を舌で舐めあげ、杉屋は恐ろしい笑みを向けてくる。
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