翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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侵入 三

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(そんな、そんな……)
 竹弥は我知らず、必死に首を横に振っていた。
 低俗下品なカストリ雑誌に描かれるようなポルノの世界のようなことが、我が身に起こるわけがない、と。
 そんな異常な、不潔な行為は自分の知らない場所でされていることだ、と。
 だが、もう、間違いない。男の、杉屋の口から赤い舌が突き出ている。
 そして彼の舌先は、まちがいなく自分の分身の先端を目指しているのだ。
「よ、よせ! やめろ、やめろったら!」
 ぎしぎしと、マホガニーのロッキング・チェアが滑稽なほどに揺れる。当然、竹弥の身体も揺れる。
「こら! 暴れるな」
 聞こえる声には怒りがあるが、目は笑っている。
 しばし杉屋の身体が離れたかと思うと、彼は縄を調節して縄先を椅子の肘掛のところに、腕を縛っている縄にかさねるようにして縛る。慣れた動作で、名人芸といっていいほど的確に強固に縄は結びつけられていく。
 その仕草動作は、一瞬、竹弥が恐怖もわすれるほどに、美しいといっていいほどに洗練された動きだった。おそらく、縄術を習得しているのだろう。江戸時代、捕物をする岡っ引きなどが、罪人を捕縛するために磨いた技術については、稼業柄、竹弥は聞き知っていた。
 そして、それは杉屋という男が、こういった荒事や後ろ暗い仕事に慣れていることをいっそう強く物語っており、いっそう竹弥を怖れさせた。
 それから再び杉屋は挑んできた。
 もはや身体を動かしようがないほどにきつく縛り上げられ、竹弥は抵抗を完全に封じられ、なす術ないまま、杉屋の赤い舌が、己の、まだいたいけさを残した分身に触れてくるのを、黒真珠のような美しい目にぼんやりと映した。
 ちょうど少年から青年へと脱皮しはじめている器官に与えられた感触は、あまりにも苛烈だった。
「あっ、ああっ!」
 否応なしに全身が震え、また椅子がぎしぎし揺れる。
「こら、暴れるな!」
 ぴしゃりと、悪戯いたずらな幼児をいさめるように、杉屋の平手が右太腿の外側をうつ。
「暴れるなよ、今度やったら噛むぞ」
 半ば本気の脅しに、竹弥の動きは小さくなってしまう。
「はぁ……!」
 ねっとりと、柔らかく生温かい感触が、竹弥の精神そのものを包みこむ。
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