翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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闇の炎 六

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 嘲笑にひらいた相手の口に、さらに鋭い牙が光るのを竹弥は見た気がした。
「あ……」
「そうそう、大人しくしていた方がいいぞ」
 男は着衣を剥いでいく。
 身をすくませていると、あっというまに太腿や膝に空気を感じた。
 シャツは腕を縛っているので脱がされることはなかったが、ボタンはすべてはずされ、白い胸肌が薄い闇ににぶく映える。竹弥は息を吐くことも忘れて、ひたすらこれから起こることに身構えた。
 やがて……かろうじて背にシャツをはりつかせ、下着一枚だけのこされた姿にされてしまった。あとは靴下。シャツも下着も靴下も白で、こんな浅ましい闇のなかでも竹弥のまだ少年らしい初々しさと、清純さを示している。
「さて、御開帳といくか」
 そのとき、いつのまに用意したのか、蔵の天井の梁から、二本の縄が下がっていることに竹弥は気づいた。
 腕を縛っているものと同じく、細いが頑丈そうな縄だ。竹弥が気を失っているあいだに準備していたのだろう。
「え? ……うわ!」
 相手は驚くほどに慣れた手つきで、竹弥の足を、その縄で縛り上げてしまう。
 ちょうど膝裏のところに縄を入れられ、男が、梁に通した二本の縄先を引くと、そのまま、ぐいぐいと両足を引っ張りあげられることになる。
 結果、竹弥は、あろうことか男を前にして両足を全開するという恥辱の姿勢を強いられていく。
「よ、よせ! やめろ! ……か、金なら少ししかないけれど……、欲しいものならみんな持っていっていいから!」
 情けないが、屋敷のものをすべて明け渡してもいいので、この責め苦から逃れたく、竹弥は自分のものでもないくせに骨董品を差し出すと言っていた。
 生まれて初めて受ける信じられない暴行に、まともにものを考えることができないのだ。
 とにかく、この異常な状況からのがれたい。
 だが、必死に言いつのりながらも、竹弥は本能ですでに直感していた。男が金品を得るためにこんなことをしているわけではないことを。
 必死の形相の竹弥を見下ろし、杉屋が楽しそうに笑った。
「俺が欲しいのは坊主、おまえだよ。ほうら、御開帳だ」
「ああ!」
 足が、全開になる。
 羞恥と屈辱に竹弥は顔を火のように熱くして、それでも歯をくいしばって泣きじゃくりそうになるのをどうにかこらえた。
「まだ、余計なものが残っているな。待ってろ、今、その白い布切れも取ってやるからな」
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