翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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闇の炎 五

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「ほう、けっこう気が強いな。怯えて泣き出すかと思ったが。ますます面白いな。これはやりがいがありそうだ」
「な、なに言ってるんだ! ふざけたことをしていないで、ほどけ!」
 かすかにだが、竹弥の足先が相手のすねを蹴った。
 ここへは下駄で来たのだが、下駄はとっくに脱げており、靴下を履いているだけだ。たいした威力はないはずだが、男はすこし眉を寄せた。
「こら、あんまり暴れるなよ。また殴らないといけなくなるぞ。あんまり乱暴なことはしたくないんだぞ、これでも」
「な、なに言っているんだよ! あんな暴力ふるっておいて。ほどけよ!」
 男が一歩、近寄った。竹弥は怯えるより、余裕ありげな相手の顔に、ますますいきりたった。
「今すぐほどけ! でないと、警察に通報するぞ。あっ!」
 やおら、男の手が竹弥の股間に触れたのだ。
 いや、たんに触れたのではなく、中心をつかむような仕草をしたのだ。それは竹弥を黙らせるほどの打撃と圧力を、心身にあたえた。
「うう……! はなせ!」
「大人しくしてろ、坊主。大人しくしていたら、なにも悪いことはしない。ちゃんと五体満足のままで終わらせてやる。だがな、」
 地獄から響いてくるような凄まじい声音で、男は竹弥をふるえあがらせるようなことを口にする。
「これ以上騒ぐようなら、坊主の大事なここ、ひねりつぶしちまうぞ」
 圧力が、さらに大きくなる。竹弥は悲鳴をあげた。
「やめろ!」   
「玉なしになるのは、嫌だろう? 将来、ちゃんとガキをつくりたいだろう? ほんのちょっとの時間、いい子にしていたらいいんだよ」
 ズボンのチャックを下ろす音が、小さな音のはずなのに、耳につんざく。
 男に衣服を脱がされようとしているのだ。
 行為の意味するところを悟って、竹弥はあわてた。
「や、やめろぉ!」
「うるせぇよ、坊主」
 薄暗い世界に、銀の光が走った。
 男の手には、鋭利なナイフがある。
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