翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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闇の炎 三

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 そして……杉屋が見せてきた道具。
 不思議なつくりのロッキング・チェア。淫らな人形の腕。おぞましい道具。
 竹弥は背に悪寒がはしるのを感じた。とてもこの場にいられない。
「おっと、どこ行くんですか、坊や」
 出口となる扉のまえに、男は立ちはだかって、竹弥を押しとどめる。竹弥は背中がますます固くなったことに気づいた。
「よ、用事があるんで。べ、勉強しないと」
 自分の肩をつかむ男の飴色あめいろがかったたくましい腕から熱と汗の匂いを感じて、竹弥は頬が熱くなるのを自覚した。
「勉強より、もっと面白いことを俺が教えてあげますよ」
 男が笑った。
(こいつ……)
 竹弥はぞっとした。
 この男は危ない。危険な男だ。今さらながらそんな直感が脳に走ったが、もはや手遅れだった。
「は、はなせ!」
 竹弥は高校時代、柔道を習ったことがあったが、とてもかなう相手ではなかった。
「うう!」
 しょせん若様育ちの竹弥である。あっさり動きを封じこめられ、ぶあつい腕に抱えこむようにされてしまう。
 それでもどうにか逃れようとした瞬間、竹弥は、心臓が止まりそうになった。
(あっ!)
 男の唇が、自分の唇にかさなっていた。
 あたたかい熱が口を通して送り込まれてくるようだ。
 二十歳の春。生まれて初めての接吻だった。
(そ、そんな!)
 男の自分が、会ったばかりの男に唇を奪われたのだ。まさに白昼に悪い夢を見ているようだと竹弥は驚愕しながらも、ぼんやり思っていた。
 そして次の瞬間、ほとんど本能に突き動かされて抗った。
 蔵のなかで荒々しい物音や叫び声が響いたのはほんの数秒だった。
 竹弥の全力かけた抵抗も、ますます力強くなった腕にはなんの影響もあたえない。
 男の唇は荒々しく、獰猛な舌が無理やり竹弥の口を割って侵入してくる。かたい蕾を割る蜥蜴の舌のようだ。
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