14 / 225
闇の炎 一
しおりを挟む
数秒、その腕を凝視したあと、竹弥はその道具の使途に思いいたって、耳朶が熱く燃えるのを悟った。
「こ、これ……!」
「面白いものでしょう? もっといろいろありますよ」
人形の腕は赤子の腕ほどの大きさである。だが、その付け根に当たる部分には、信じられないものが取り付けてあった。
男性器をかたどった、淫らな道具である。
陶器でできているのか、蔵の薄闇のなか、妙にてらてらと鼠色に光って見える。
竹弥は後ずさった。
「ほら、これも」
竹弥の怯えた態度がおもしろいのか、杉屋は調子にのって別の腕を取り出して、突き出してくる。
象牙のもので、最初に見せられたものよりかはやや大きく、竹弥を赤面させた。
竹弥は全身が熱く燃えるのを自覚した。
ちょうど一月半ほどまえ、二十歳になった竹弥は、まだ異性というものを知らない。生まれ育ちにくわえて人並みより恵まれた容姿のせいで目立つせいか、女性というものには慎重……というより臆病になっているところがあるのだ。
中学生、いや小学校も高学年になるころから、竹弥が女子と少しおしゃべりしたり、親切にしたりすると、周囲がやたらと騒ぐようになり、鵜の目鷹の目で見張られているようで、閉口させられた。それが面倒くさく、女子とは意識してかかわらないようにしてきたところがある。
それは大学に入ってからも変わらなかった。教室やゼミでもつねに異性には壁をつくっているところがあり、それとなく誘われてもやんわりと断ってきた。男子寮に入ったせいもあって、未だに女性というのは遠い存在である。性体験どころか、手を握ったこともないほどだ。親しく言葉をかわしたことも少ない。
そうやって竹弥が壁をつくってしまうせいか、女生徒たちの多くは竹弥に近寄りがたいものを感じて、憧れはしてもみずから近寄ってはこない。
(近江君て、なんだか冷たい感じがする……)
(でも、そこがかえって素敵。いかにも梨園の王子様よね)
そう言われていることも知っているが、批判も賞賛も気にしていなかった。まだ女性にたいして興味も欲望もわいてこないのだ。
そんな無垢な竹弥にとって、目の前のおぞましい異形の道具は驚愕と恐怖の対象でしかない。
「こ、これ……!」
「面白いものでしょう? もっといろいろありますよ」
人形の腕は赤子の腕ほどの大きさである。だが、その付け根に当たる部分には、信じられないものが取り付けてあった。
男性器をかたどった、淫らな道具である。
陶器でできているのか、蔵の薄闇のなか、妙にてらてらと鼠色に光って見える。
竹弥は後ずさった。
「ほら、これも」
竹弥の怯えた態度がおもしろいのか、杉屋は調子にのって別の腕を取り出して、突き出してくる。
象牙のもので、最初に見せられたものよりかはやや大きく、竹弥を赤面させた。
竹弥は全身が熱く燃えるのを自覚した。
ちょうど一月半ほどまえ、二十歳になった竹弥は、まだ異性というものを知らない。生まれ育ちにくわえて人並みより恵まれた容姿のせいで目立つせいか、女性というものには慎重……というより臆病になっているところがあるのだ。
中学生、いや小学校も高学年になるころから、竹弥が女子と少しおしゃべりしたり、親切にしたりすると、周囲がやたらと騒ぐようになり、鵜の目鷹の目で見張られているようで、閉口させられた。それが面倒くさく、女子とは意識してかかわらないようにしてきたところがある。
それは大学に入ってからも変わらなかった。教室やゼミでもつねに異性には壁をつくっているところがあり、それとなく誘われてもやんわりと断ってきた。男子寮に入ったせいもあって、未だに女性というのは遠い存在である。性体験どころか、手を握ったこともないほどだ。親しく言葉をかわしたことも少ない。
そうやって竹弥が壁をつくってしまうせいか、女生徒たちの多くは竹弥に近寄りがたいものを感じて、憧れはしてもみずから近寄ってはこない。
(近江君て、なんだか冷たい感じがする……)
(でも、そこがかえって素敵。いかにも梨園の王子様よね)
そう言われていることも知っているが、批判も賞賛も気にしていなかった。まだ女性にたいして興味も欲望もわいてこないのだ。
そんな無垢な竹弥にとって、目の前のおぞましい異形の道具は驚愕と恐怖の対象でしかない。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説



ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!


朔の生きる道
ほたる
BL
ヤンキーくんは排泄障害より
主人公は瀬咲 朔。
おなじみの排泄障害や腸疾患にプラスして、四肢障害やてんかん等の疾病を患っている。
特別支援学校 中等部で共に学ぶユニークな仲間たちとの青春と医療ケアのお話。

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる