紅蓮の島にて、永久の夢

文月 沙織

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影花満開 九

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「俺は遠目にあんたを見てびっくりした。こんな綺麗な軍人がいるのか、と」
 今のヴルブナの目には、鏡に映るアレクサンダーと、思い出のなかの舞踏会のアレクサンダー、どちらが映っているのか。
「その場にいたどんな貴公子より軍服姿のあんたは際立っていたな。貴婦人たちの目はあんたに釘付けだった。若き伯爵にして少佐。頭脳明晰、眉目秀麗。ほんとうにそんな人間がこの世にいるのかと、呆気にとられたぜ」
 声にはどこか夢心地とした響きがあった。
「まさか、あのときは、あんたの身体にこんな秘密があったとは夢にも思わなかったぜ……」
 ヴルブナの指は苦しい姿勢をとらされているアレクサンダーの秘部に伸びる。
「すごい……ぐっしょり濡れて、卵が蜜にまみれているな」
「あっ……ああっ」
 出したいと望んでいるのに、身体はいざとなるとこわばって、中途半端なところで止まってしまう。
 花園からかすかに見える白い艶っぽい輝き。
 芽吹く若芽の存在も強烈だ。
 その状態をすべて晒け出させられているのだから、淫猥さ、卑猥さは壮絶である。
 ハサピスがふざけたように、三分の一ほど出てきた卵を指で突き、押し戻してしまう。
「ううっ……!」
 どんな場末の売春宿の娼婦ですら恥じ入る姿を強いられ、続けさせられているこの異常な性戯に、アレクサンダーの苦痛は極限まで高まった。
「あのころ、まさか数年後にあんたのこんなものすごい格好を拝めるとは……、本当に夢にも思わなかったぜ。舞踏会であんたに手を取られることを待っていた淑女たちに、この姿を見せてやりたいな」
「あっ、ああっ!」
 ヴルブナの口がアレクサンダーの項につく。舐めたり噛んだりするのではなく、ただ唇をそこにつけ、接吻、といえないような接吻をほどこした。
「あんたを崇拝していた部下たち、あんたの可愛い花嫁に……、今は未亡人か。皆に見せてやりたいぜ」
 ヴルブナの手がアレクサンダーの平べったい胸を撫であげる。
「うう……」 
 アレクサンダー=フォン=モールが崩壊していく。
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