紅蓮の島にて、永久の夢

文月 沙織

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深宮の花婿 十

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 アレクサンダーの身体は一瞬硬直し、数秒かたまった。なにが起こったかはピロテスやソロモンにも察せられたかもしれない。
 数秒の沈黙のあと、レキウスが感嘆したようにつぶやいた。
「……なんと、帝国軍人がこれほどあっけないとは。アレクサンダー=フォン=モール少佐は希代の美男でありながら天性の軍人だと聞いていたが、とんだおかどちがいだったようだ。島の場末の娼婦ですらもうすこし貞操堅固だぞ」
 毒を秘めた笑い声が閨にひびく。
「ああ……」
 どこか切なさを含んだ吐息をこぼして、アレクサンダーのはりつめていた両腕から力が抜けるのをレキウスも感じたろう。
「それほど殿下の手管が素晴らしいのですわ」
 ピロテスの声に、レキウスは笑った。
「まだまだ。夜は長いぞ、アレクサンダー。おまえやおまえの軍隊はこの島を攻撃し本国をも占領した。今宵は余がおまえの身体を徹底的に侵略してやろう。今からおまえは完全に余のものになるのだ」
 自らの言葉に酔っているようだ。レキウスはどこか尋常ではなかった。
「自分のしたことのつけを払うがよい。今宵、おまえは余の花嫁となり……そして娼婦となるのだ。命じられればどんなことでもする最高級の奴隷娼婦とな」
 その言葉は、なかば朦朧となっていたアレクサンダーの背に怖気を感じさせるに充分だった。
 アレクサンダーの体温が一瞬下がったのを悟ったか、レキウスの言葉はわずかながら慰藉いしゃをふくんだものにになる。
「恐れるな。これから余が腕によりをかけて、おまえを娼婦として調教してやるのだ。ピロテスの調教と余の調教のどちらが良いか、おまえ自身の身体で比べてみるがよい。これは、おまえにとっても良いことなのだぞ。身も心も完全な娼婦となった方が、この先楽にになれる。おまえは、もう二度とこの島を出れぬ身なのだから」
 呆然となっているアレクサンダーの頬に、ふざけたように軽く音をたてて接吻し、レキウスは右手をアレクサンダーの後ろの園に伸ばした。
「こちらも出すとするか。いや、なにもかも余がしてしまうと、怠け癖がついてしまうかもしれぬから、今度はアレクサンダー、おまえ自身で出すがよい」
 アレクサンダーは唇を噛みしめ、一瞬躊躇したが抵抗する気力も失せ、しぶしぶとだが右手を背後にまわし、銀鎖を引っぱろうとした。
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