紅蓮の島にて、永久の夢

文月 沙織

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床入り準備 七

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 しかも、これだけ嬲られても、悔しげに唇を噛む仕草や、潤んだ蒼い瞳に燃える瞋恚しんいのきらめきが、アレクサンダーが生まれたときから備えていた気骨をしのばせ、これがまた見る者の心をしめつける。そして、残酷な悪人たちの加虐欲をいっそうあおるのだ。
 気位たかく清純な姫君を堕とすというのは、男の永遠の願望なのかもしれない。
「まったくですね。ですが、ピロテス様、今からあまり昂らせるのも……。アレクサンダーは我慢できないようですよ」
 アレクサンダーは自分でも気づいていなかった肉体の反応を背後のマヌエルに指摘され、焦った。
「なに? おや。おまえ、はやくも小袋を濡らしておるのか、アレクサンダー? なんという淫乱じゃ」
 アレクサンダーは、今度は顔を伏せかけたが、かろうじて息を吐くだけにとどめ、必死の努力で泣くのをこらえた。
 そんなふうに耐える姿が、いっそうこちらの嗜虐欲をあおっていることに、何故気づかないのか。マヌエルは妙に冷めた頭で考えていた。
「まったくしょうのない。好き者の花嫁など興醒めでないか。よいか、殿下の御前では気をつけるのじゃぞ、とはいっても、濡れておるのは隠せぬのぅ。ホホホホホ」
 残酷な笑い声をたて、ピロテスは銀糸で織り上げた薄布を指さす。
「穿きかえさせたものか?」
「そろそろ時間がせまっております。殿下のご寛容を乞いましょう」
 実際にはまだ余裕があるが、マヌエルはせかしてみた。
「ふむ。仕方あるまい。殿下のご不興をかったときは、謝るのじゃぞ。『お先に濡らしてしまって申し訳ございません、おゆるしください』と」
 ピロテスの残忍さがじわじわとたかまっていくのを、マヌエルは内心、やや困ったことだと苦笑しながら見ていた。
「なんじゃ、その生意気な目は? 殿下の御前でちゃんと言えるように、練習するがよい。今言うてみろ」
「ピロテス様、時間が」
「黙っておれ。礼儀は教えておかねばならないのじゃ。さ、言うてみよ」
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