紅蓮の島にて、永久の夢

文月 沙織

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日影の宮殿 四

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「嘘だよ! あたい、なにもしてないのに、このじいさんが変なことしようとしてきたんだ!」
 下層階級の言葉ではあるが、英語であり、ヴルブナはなんとか聞きとれた。頭に巻いた厨房用の布からこぼれる髪は金髪で、ちゃんと手入れをすればさぞ美しいだろうと思われる。
「お嬢ちゃん、あんた幾つだ?」
 くずれた英語で問うと、少女はおずおずと答えた。
「じゅ、十二……、もうすぐ十三だよ」
「ふーん」
 にんまりとヴルブナは笑った。
 いくら無法同然の島とはいえ、さすがに聖職者が十二の子どもに手を出すのはまずいだろう。いや、この館では、許可なしに手を出すことのほうがまずいのかもしれない。
「これはピロテスに報告した方がいいかもしれないな」
「ま、待て! ち、ちがうのだ! この娘の方が金欲しさに言いよってきたのじゃ!」
「ちがうよ!」
 少女は叫んだ。
「母さんの薬代が要ることは言ったけれど……。相談にのるっていってくれて、そ、そしたら、いきなりあたいのこと抱き寄せて、自分のチンポ舐めさせようとしたんだ!」
「なにを言っておる!」
 ソロモンは真っ赤になって激怒したが、その顔には焦りが見える。
「へぇぇぇ。坊さん、そういうのが好きなんだな」
 ヴルブナは痛快になってきた。
 このソロモンという男はこの館でも高い地位と影響力があるはずだ。
(これは使えるな)
 ヴルブナはソロモンの肩を優しく撫でた。
 老人は警戒するような目をむける。
「安心しろよ。野暮なことは言わないさ。その代わり、この子に薬代の金は払ってやれよ」
「……ピロテスには言わないでくれるか?」
 小声でソロモンは訊いた。
「安心しろ。それより、今度は俺の相談にのってくれよ」
 ヴルブナも小声で返してから、座りこんでいる少女に近づき、手を貸して立たせた。
「安心しろ、嬢ちゃん。もうこのじいさんはあんたに悪いことはしないし、薬代も出してくれるそうだ」
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