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淫花開花 八

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 今夜はどんな目にあわせてやろうかと滾るような情欲に燃えて、やってきたのだ。それがいきなり今日は会えないと言われ、頭が真っ白になった。
「今日が無理なら、明日は会えるのか?」
 かすかに譲歩の色を見せたが、マヌエルは首をかしげるしかない。
「さ……、それは。おそらくしばらくは無理かと」
 先のことはマヌエルにもわからない。殿下やピロテスが決めることだ。自分は言われたことをするだけなのだ。
「……なんだよ」
 ヴルブナはふてくされた子どものような顔をした。不思議なことに、そんな幼稚な態度や表情を見せると、普段の灰汁あくの強さや剣呑さがうすれ、奇妙に憎めないような気にさせられる。
「……他の男の……相手をするのか?」
 ヴルブナの目には恨みがひそんでいた。
 相手は殿下だと言いそうになったが、館の秘事にかかわることである。あまりしゃべってはいけない。それでも、ヴルブナを宥めるためにマヌエルは言葉をつないだ。
「アレクサンダーは、もともとそうなるためにこの館につれてこられたのです。あなたの相手をするためではないことは、最初からあなたも知っていたことでしょう? あなたには調教の手伝いをたのんだだけです」
 悔しそうにヴルブナが唇を噛んでうつむいた。
(この男は……)
 内心マヌエルは驚いた。
 この男は、かなりアレクサンダーにまいってしまっているのだ……。
 たしかに欲望に我をうしなっているが、それなら他の相手を買えばいいことだが、それではすまなくなっているのだ。館ではヴルブナでも手に入る下級の娼婦男娼もいる。館に来る金持ち客のなかにはたまにメイドやボーイに興味を持つものもいる。下働きたちは、そういった仕事も兼ねている。
 巷の売春宿でも金さえ出せば一晩遊ぶ相手はいくらでもいるし、観光客を相手に商売をしているこのこの小島では売春は収入源でもあり、素人でも外国人に声をかけられれば、外国人たちにとってはした金同然の外貨で、人妻でも路地裏であっさりと脚をひらく。
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