紅蓮の島にて、永久の夢

名花二輪 九

　そして、なによりもシャルロットに複雑な執着をもっているアレシアには、この先娼婦として働かせるシャルロットの最初の相手は、脂ぎった年寄りや変態趣味の金満家ではなく、アレクサンダーのような見目麗しい青年を、という、せめてもの情もあった。
　相手が生まれ育ち申し分ない凛々しい若者なら、シャルロットにも救いがあるだろう、というアレシアにとってはなけなしの温情でもあるのだ。
「さぁ、そうと決まれば、さっそく二人の床入りの準備をせねばな。新妻に、花婿を迎える用意をさせてやるがよい」
　シャルロットはぎょっとして伏せていた顔をあげた。
　ちょうど真正面にはアレクサンダーの全裸にちかい身体が見える。
　男にしては白い肌を見た瞬間、シャルロットはまた顔を伏せた。
　今のこの状況だけでも、いたたまれなさに身が焦げるような想いだというのに、これからこの悪魔たちはさらに残虐なことを自分にしようというのだ。
　アレクサンダーと自分を一日だけの夫婦にすると言っている。
　この地獄の館につれてこられてからも、死に物狂いになって守りつづけた操を、これからアレクサンダーを相手にして散らすことになるのだ。
　勿論、アレクサンダーだとて望んですることではないだろうが、シャルロットにとっては悪党たちに強制されて処女をうしなうのは恐怖と屈辱でしかない。
「や、やめて！　やめてください！」
「よせ！　やめろ！」
　ほぼ二人同時に哀願めいた拒絶の言葉をはなったが、ピロテスの命にアレシアは嬉々としてしたがう。
「安心おしよ、お嬢さん、ちゃんとあたしが下準備をして、気持ちよくしてやるよ。一人前の女になって色香をまして、これから最高級の娼婦になるよう磨きあげてやろうじゃないか」
「やめて！」
　絶望的な気持ちになりながらも、尚もシャルロットは反抗しつづけた。
「アレシア、まず気分を出すために、胸を揉んでやるがよい」
「はっ！」