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名花二輪 五
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その問いに答えるかのように地下室の扉が開いた。
「やめて! やめてぇ!」
四人の屈強な男たちが頭上にかかげるようにして運んできたのはシャルロットである。
新たな犠牲者が先ほどの手酷い羞恥責めを受けていた少女だとわかった瞬間、アレクサンダーの怒りはさらに高まった。
なんとかして助けたいと思い、彼女の代わりに責めを受けることを約束して、今ここでこれほど不様な目を見ているというのに、約束は果たされなかったのだ。
それを恥じとも思わず平然と見せつけてくるピロテスに、さらなる恨みと軽蔑がわく。
「この……悪魔!」
「最高の誉め言葉ととっておこう。……じゃがな、」
ピロテスの持つ鞭先がアレクサンダーの顎を突く。
「この世にはな、もっともっと恐ろしく邪悪な悪魔たちがいるのじゃ。そんな悪魔のなかの魔王が今世界を統べておるのじゃぞ。知っておるのか、おまえは? その魔王にくらべれば妾など天使じゃ。ここは奴らの世界にくらべれば、サナトリウムのようなものじゃ」
「なにがサナトリウムだ!」
アレクサンダーが全身をふるわせ怒りを発しても、ピロテスは気にもとめず、アレシアに合図を送るように鞭を振る。
アレシアと私兵の男たちの動きは早い。
シャルロットの身体が石床におろされる。混乱しつつもシャルロットは頭をあげ、周囲を見渡し、ピロテスとアレクサンダーの姿をみとめて、恐怖と羞恥に震えた。
卑しい兵隊たちに見られるより、美しい青年に裸体を見られるほうが彼女にとっては千倍もつらいのだろう。
「い、いや……」
蚊の鳴くような小さな声でつぶやき、顔を伏せた。黄金の髪が雪白の背にながれるようにからまる姿は絶品である。
アレクサンダーの方も同様だった。ピロテスやアレシアのような卑劣な悪漢や、下級兵士たちの下種な視線には耐えられても、シャルロットのような清純そうな乙女の目に、縛られ片足を開かされたほぼ全裸の、今の自分の姿が映されるのかと思うと、さしも強靭な彼の精神も傷つかずにいられない。
「やめて! やめてぇ!」
四人の屈強な男たちが頭上にかかげるようにして運んできたのはシャルロットである。
新たな犠牲者が先ほどの手酷い羞恥責めを受けていた少女だとわかった瞬間、アレクサンダーの怒りはさらに高まった。
なんとかして助けたいと思い、彼女の代わりに責めを受けることを約束して、今ここでこれほど不様な目を見ているというのに、約束は果たされなかったのだ。
それを恥じとも思わず平然と見せつけてくるピロテスに、さらなる恨みと軽蔑がわく。
「この……悪魔!」
「最高の誉め言葉ととっておこう。……じゃがな、」
ピロテスの持つ鞭先がアレクサンダーの顎を突く。
「この世にはな、もっともっと恐ろしく邪悪な悪魔たちがいるのじゃ。そんな悪魔のなかの魔王が今世界を統べておるのじゃぞ。知っておるのか、おまえは? その魔王にくらべれば妾など天使じゃ。ここは奴らの世界にくらべれば、サナトリウムのようなものじゃ」
「なにがサナトリウムだ!」
アレクサンダーが全身をふるわせ怒りを発しても、ピロテスは気にもとめず、アレシアに合図を送るように鞭を振る。
アレシアと私兵の男たちの動きは早い。
シャルロットの身体が石床におろされる。混乱しつつもシャルロットは頭をあげ、周囲を見渡し、ピロテスとアレクサンダーの姿をみとめて、恐怖と羞恥に震えた。
卑しい兵隊たちに見られるより、美しい青年に裸体を見られるほうが彼女にとっては千倍もつらいのだろう。
「い、いや……」
蚊の鳴くような小さな声でつぶやき、顔を伏せた。黄金の髪が雪白の背にながれるようにからまる姿は絶品である。
アレクサンダーの方も同様だった。ピロテスやアレシアのような卑劣な悪漢や、下級兵士たちの下種な視線には耐えられても、シャルロットのような清純そうな乙女の目に、縛られ片足を開かされたほぼ全裸の、今の自分の姿が映されるのかと思うと、さしも強靭な彼の精神も傷つかずにいられない。
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