紅蓮の島にて、永久の夢

文月 沙織

文字の大きさ
上 下
123 / 211

名花二輪 五

しおりを挟む
 その問いに答えるかのように地下室の扉が開いた。
「やめて! やめてぇ!」
 四人の屈強な男たちが頭上にかかげるようにして運んできたのはシャルロットである。
 新たな犠牲者が先ほどの手酷い羞恥責めを受けていた少女だとわかった瞬間、アレクサンダーの怒りはさらに高まった。
 なんとかして助けたいと思い、彼女の代わりに責めを受けることを約束して、今ここでこれほど不様な目を見ているというのに、約束は果たされなかったのだ。
 それを恥じとも思わず平然と見せつけてくるピロテスに、さらなる恨みと軽蔑がわく。
「この……悪魔!」
「最高の誉め言葉ととっておこう。……じゃがな、」
 ピロテスの持つ鞭先がアレクサンダーの顎を突く。
「この世にはな、もっともっと恐ろしく邪悪な悪魔たちがいるのじゃ。そんな悪魔のなかの魔王が今世界を統べておるのじゃぞ。知っておるのか、おまえは? その魔王にくらべれば妾など天使じゃ。ここは奴らの世界にくらべれば、サナトリウムのようなものじゃ」 
「なにがサナトリウムだ!」
 アレクサンダーが全身をふるわせ怒りを発しても、ピロテスは気にもとめず、アレシアに合図を送るように鞭を振る。
 アレシアと私兵の男たちの動きは早い。
 シャルロットの身体が石床におろされる。混乱しつつもシャルロットは頭をあげ、周囲を見渡し、ピロテスとアレクサンダーの姿をみとめて、恐怖と羞恥に震えた。 
 卑しい兵隊たちに見られるより、美しい青年に裸体を見られるほうが彼女にとっては千倍もつらいのだろう。
「い、いや……」
 蚊の鳴くような小さな声でつぶやき、顔を伏せた。黄金の髪が雪白の背にながれるようにからまる姿は絶品である。
 アレクサンダーの方も同様だった。ピロテスやアレシアのような卑劣な悪漢や、下級兵士たちの下種な視線には耐えられても、シャルロットのような清純そうな乙女の目に、縛られ片足を開かされたほぼ全裸の、今の自分の姿が映されるのかと思うと、さしも強靭な彼の精神も傷つかずにいられない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

少年達は淫らな機械の上で許しを請う

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...