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名花二輪 三
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アレクサンダーが連れていかれたのは、地下牢だった。
「くそ……!」
おそらくは、奴隷を拷問するために作られて特殊な室なのだろう。
天井も壁も黒々として陰気で不吉に見え、天井あたりすれすれに小さな、それこそ鼠しか出入りできないような小窓があるのは、空気を入れるためのようだ。
湿った黴臭さにまじる別の異臭は血の臭いだと軍人であるアレクサンダーは気づいた。だが、そこに、かすかに薬のような臭いも感じ、室の異臭をやや中和させている。
天井から釣り下がる、おそらくは囚人を釣りあげるための鉄の錨のような器具がぶら下がり、壁にはまるで商品のように大小の鞭が並んでいるのが強烈に印象的だ。
ここはまさしく魔窟のなかの地獄部屋である。
「くそっ……」
アレクサンダーは柄にもなく捨て鉢な言葉を吐いていた。
私兵たちによって腰布をのこして衣をはぎ取られ、両手を吊りあげられ、先ほどシャルロットがされていたように右足を膝のところで縛られ、大きく上げられるようにして、その縄先は首に繋げられた。
ピロテスは言ったとおり、シャルロットに与えた同じ罰をアレクサンダーに与えたのだ。唯一の救いは、見る者がほとんどいないことだろう。
暗い地下室にいるのは、ピロテスと二人の私兵だけだ。今のところは。観衆の目が少ないことがアレクサンダーの心をいくばくか安堵させる。
「その腰布、おまえに似合おうておるではないか?」
アレクサンダーの頬は羞恥に燃えた。
ピロテスが鞭先でたぐり上げるようにした布は、黒いレース網のものだった。
これを身に着けることを強要されたときの屈辱をアレクサンダーは忘れられない。
祖国のものとは形はちがうが、それが女性用のものであることは一目瞭然だ。おそらくは高級なものなのだろうが、誇り高いアレクサンダーにとっては女ものの下着を身にまとうなど耐えられない。
「くそ……!」
おそらくは、奴隷を拷問するために作られて特殊な室なのだろう。
天井も壁も黒々として陰気で不吉に見え、天井あたりすれすれに小さな、それこそ鼠しか出入りできないような小窓があるのは、空気を入れるためのようだ。
湿った黴臭さにまじる別の異臭は血の臭いだと軍人であるアレクサンダーは気づいた。だが、そこに、かすかに薬のような臭いも感じ、室の異臭をやや中和させている。
天井から釣り下がる、おそらくは囚人を釣りあげるための鉄の錨のような器具がぶら下がり、壁にはまるで商品のように大小の鞭が並んでいるのが強烈に印象的だ。
ここはまさしく魔窟のなかの地獄部屋である。
「くそっ……」
アレクサンダーは柄にもなく捨て鉢な言葉を吐いていた。
私兵たちによって腰布をのこして衣をはぎ取られ、両手を吊りあげられ、先ほどシャルロットがされていたように右足を膝のところで縛られ、大きく上げられるようにして、その縄先は首に繋げられた。
ピロテスは言ったとおり、シャルロットに与えた同じ罰をアレクサンダーに与えたのだ。唯一の救いは、見る者がほとんどいないことだろう。
暗い地下室にいるのは、ピロテスと二人の私兵だけだ。今のところは。観衆の目が少ないことがアレクサンダーの心をいくばくか安堵させる。
「その腰布、おまえに似合おうておるではないか?」
アレクサンダーの頬は羞恥に燃えた。
ピロテスが鞭先でたぐり上げるようにした布は、黒いレース網のものだった。
これを身に着けることを強要されたときの屈辱をアレクサンダーは忘れられない。
祖国のものとは形はちがうが、それが女性用のものであることは一目瞭然だ。おそらくは高級なものなのだろうが、誇り高いアレクサンダーにとっては女ものの下着を身にまとうなど耐えられない。
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