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名花二輪 一
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この名花を、とことん凌辱し、心身ともに生まれながらの娼婦に作り変えてやるーー。
そんな決意がピロテスのなかに生まれ、闘志のようなものすら沸いてくる。
そのとき、遠巻きに見ていた者たちのなかから、声が響いてきた。
「おい! よせ、何をしているのだ!」
人をかきわけ、あらわれたのはアレクサンダーだった。
半ば予想していたが、顔を真っ赤にして怒るアレクサンダーにピロテスは内心含み笑いをした。
(思った通りじゃ……)
アレクサンダーは今はアラビア風のゆったりとした長衣をまとっている。薄紫のその衣は、彼に似合っており、もう何年もこの地に暮らしている白人のように見える。
「若い娘に、なんて酷いことをするのだ! すぐ縄をほどいてやれ!」
ピロテスは背を反らして笑い出したくなった。
奴隷として調教され、幾度となく自尊心を傷つけられ泣いたアレクサンダーだが、今はシャルロットの酷い姿に義憤をかきたてられ、言わずにいられないのだろう。彼の軍人貴族としての誇り、というよりも、これほど過酷な状況でもなくなることのない天性の負けん気が言わせるのだ。
けっして損なわれぬ彼の勇気と精神力になかば感心し、なかば呆れ、そしてまたシャルロットに対して感じたのと同じように、この若く美しく、獅子の心を失わぬ貴族を、かならず身も心も男娼に堕としてやろうという気概がピロテスのなかにわく。
シャルロットの閉じられていた瞼が開き、突然あらわれた凛々しい青年の姿を見て、彼女は青ざめていた頬を赤く燃やした。
おぞましい調教師や館の使用人や客に今の自分の姿を見られることよりも、アレクサンダーのような高貴な風貌の青年に見られることの方が彼女にとっては辛いのだ。
シャルロットはアレクサンダーの際立った容貌に、以前自分と同じ船で連れてこられた青年であることを思い出し、身体をふるわせ、また目を閉じた。初心な彼女にとって、耐えがたい状況である。
そんな決意がピロテスのなかに生まれ、闘志のようなものすら沸いてくる。
そのとき、遠巻きに見ていた者たちのなかから、声が響いてきた。
「おい! よせ、何をしているのだ!」
人をかきわけ、あらわれたのはアレクサンダーだった。
半ば予想していたが、顔を真っ赤にして怒るアレクサンダーにピロテスは内心含み笑いをした。
(思った通りじゃ……)
アレクサンダーは今はアラビア風のゆったりとした長衣をまとっている。薄紫のその衣は、彼に似合っており、もう何年もこの地に暮らしている白人のように見える。
「若い娘に、なんて酷いことをするのだ! すぐ縄をほどいてやれ!」
ピロテスは背を反らして笑い出したくなった。
奴隷として調教され、幾度となく自尊心を傷つけられ泣いたアレクサンダーだが、今はシャルロットの酷い姿に義憤をかきたてられ、言わずにいられないのだろう。彼の軍人貴族としての誇り、というよりも、これほど過酷な状況でもなくなることのない天性の負けん気が言わせるのだ。
けっして損なわれぬ彼の勇気と精神力になかば感心し、なかば呆れ、そしてまたシャルロットに対して感じたのと同じように、この若く美しく、獅子の心を失わぬ貴族を、かならず身も心も男娼に堕としてやろうという気概がピロテスのなかにわく。
シャルロットの閉じられていた瞼が開き、突然あらわれた凛々しい青年の姿を見て、彼女は青ざめていた頬を赤く燃やした。
おぞましい調教師や館の使用人や客に今の自分の姿を見られることよりも、アレクサンダーのような高貴な風貌の青年に見られることの方が彼女にとっては辛いのだ。
シャルロットはアレクサンダーの際立った容貌に、以前自分と同じ船で連れてこられた青年であることを思い出し、身体をふるわせ、また目を閉じた。初心な彼女にとって、耐えがたい状況である。
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