紅蓮の島にて、永久の夢

悪党たちの城 四

　必死に気負ってはいても、やはりうら若き深窓の乙女である。蝶よ花よと大事にそだてられた名門の姫君が、こんなおそろしい地獄につれてこられて、鬼畜のような連中に責めいたぶられ、気も狂わんばかりの恐怖に連日さいなまされているのだ。
　監視がきびしいので自殺もできず、発狂寸前でありながらも、貴顕の身にそなわった誇りと、どこかで必ず祖国の権門の家の長である父親が、なんとか救いの手をまわしてくれるのではないかという、はかない希望にとりすがって生き永らえているのだ。
（ああ、お父様……お願い、早く助けにきて）
　シャルロットは細い腕で己の身体を抱きしめ、ふるえた。
　その姿はひどく可憐でいじらしく、どんな冷酷な者でも憐憫の情がわいてくるだろうが、あいにくピロテスは、そんないじらしい存在を見れば見るほど嗜虐心がわくという性癖の持ち主だった。
　それに生まれ育ちの良さからくる磨き抜かれた玉のような令嬢の美しい容姿、気品、優美さを見せつけられていると、ピロテスのなかには、言いようのない昂りが沸いてくる。
　それはアレクサンダーに対しても感じたものだったが、嗜虐欲と征服欲がまざりあった感情であり、その根底にあるのは妬ましさと羨望なのかもしれない。
　日の当たる場所で大切にはぐくまれた咲染めの薔薇を手折ってやりたいという、はげしいサディストの血がピロテスのなかで滾たぎってくるのだ。　
「まったく、この我がままなお嬢様をどうしたものかね。一度、たんとこらしめてやらないとねぇ」
　ピロテスの横顔は、アレシアですら鼻白むほど凄惨なものに変じてきた。
　シャルロットが大蛇に睨まれた子兎のように身をいっそうすくませ、ぶるぶるとふるえた。
「鞭でひっぱたいてやろうかねぇ。けれどあまり傷がつくと売り物にならなくなるし……。裸にひんむいて中庭の木に犬のようにつないでやろうかぇ？　木馬に乗せてやろうかぇ？　そうだ、いっそ……ふふふふふ、あれをしてやろうか？」
「あれ……、ですか？」
　アレシアが心得たように合わせる。
「それはいいですね、あれをされると、どんな高慢な女でもしおらしくなりますからね」