紅蓮の島にて、永久の夢

闇の撮影会 一

　それからは、アレクサンダーにとって煉獄の日々がつづいた。
　ピロテスはアレクサンダーに絶対服従を要求し、アレクサンダーが少しでも拒否したり躊躇したりすると、マヌエルが脅しの言葉をささやくのだ。この悪魔の主従によって、アレクサンダーは屈辱を飲み込み、自尊心を削り落とされるような苦悶の日々に耐えることになった。
　まずピロテスがアレクサンダーに教えこんだのは、命じられたことを必ずやることだ。
「いいかぇ？　妾が服を脱げといえば、すぐ脱ぐのじゃ。跪けと命じれば跪き、自慰をせよと命じればするのじゃ」
　潔癖で誇りたかいアレクサンダーにとっては、耳を疑うような言葉だ。
　むろん、激しく逆らった。最初は。
「できるか！　そ、そんなこと……！」
　その都度、ピロテスは黒皮の鞭で石床を叩いた。脅すだけで、実際に打たれたことはまだないが、その鞭音はアレクサンダーの鼓膜を傷つける。
　無念をおさえ、頬を羞恥と恥辱に赤く燃やし、アレクサンダーはピロテスの命にしたがうしかない。何度もピロテスの言う、色気をにじませるやり方で着脱の練習をさせられ、命じられた姿勢を取らされるしかない。
　その姿勢というのも、口に出すのも浅ましいもので、これを実行するのにはアレクサンダーは戦場で命を懸けて戦ったときよりも勇気と精神力が必要になった。
　しかも、

　カシャリ！

　その機械音を耳にしたときは、アレクサンダーは息を飲んだ。
　アレクサンダーがピロテスに強制されて、大理石の床石のうえに四つん這いの惨めな姿勢を取らされていたまさにそのときに、その音は背後で響いたのだ。
　アレクサンダーにとっては、全身がふるえるような恐ろしい雷いかづちの音にも聞こえた。
　マヌエルがこの時代の最新型であるライカの写真機を手にして、あろうことか、全裸で床に両手をついている彼の恥ずかしい姿を撮っているのだ。