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落花検分 二
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「さて、心の準備はできたか?」
ピロテスは純白のドレスをまとっており、その手には深紅の薔薇がある。
本当に女王様気どりだとアレクサンダーは内心笑ったが、相手はそんなアレクサンダーの侮蔑を読みとったのか、薔薇の花をアレクサンダーの顎に向けてきた。
「やはりおまえの無礼さはなおらぬようじゃな。この生意気な奴隷をどう仕込むべきか。まぁ、気長にやるとするか。では、まず今日は初歩の初歩として、脱ぎ方から教えるか」
アレクサンダーは聞いていて馬鹿々々しくて仕方ない。鼻で笑ってやろうとしたが、ピロテスの背後に控えているマヌエルの冷たい視線が見逃してくれそうにないので、心の内だけのことにした。
「おまえ、服を脱ぐときに意識したことはないか?」
そんなことあるか、と言いかけて、学生時代の更衣室での着替えを思い出す。軍隊に入ってからもあったことだが、アレクサンダーは着替え中、ときに他者の視線が気になったことが思い出される。
何人かの目が自分の肌を見ていることが、たしかにあった。気のせいかと思うこともあったが、気のせいではなかった。どうやら自分の身体が男ばかりの世界で、人目を引くものだと気づいたのは、かなり後になってからで、それを知ったときはなんとも不愉快に感じたものだ。
「良いか。白蓮となるからには、ただ衣を脱げば良いというものではない。脱ぐときも相手の視線を意識し、欲を引き出す脱ぎ方をせねばならぬ。それを考えながら脱いでみよ」
馬鹿々々しい……!
そんな想いが顔に出ていたのだろう、ピロテスの眉間に皺が寄ったのが目に入ったのと、左頬に軽い痛みを感じたのは同時だった。
「何をする!」
ピロテスが手にしていた薔薇の花でアレクサンダーの頬を打ったのだ。
大理石の床に深紅の花びらが二枚散った。
「なんじゃ、その反抗的な顔は? やる気がないのならば、おまえは黒蓮に落とされることになるのじゃぞ」
アレクサンダーは歯軋りしそうになりつつも、ここで抗っても利はないと判断し、しぶしぶ着ているものを脱ぎはじめた。
「なんじゃ、そのやる気のない脱ぎ方は?」
ピロテスは純白のドレスをまとっており、その手には深紅の薔薇がある。
本当に女王様気どりだとアレクサンダーは内心笑ったが、相手はそんなアレクサンダーの侮蔑を読みとったのか、薔薇の花をアレクサンダーの顎に向けてきた。
「やはりおまえの無礼さはなおらぬようじゃな。この生意気な奴隷をどう仕込むべきか。まぁ、気長にやるとするか。では、まず今日は初歩の初歩として、脱ぎ方から教えるか」
アレクサンダーは聞いていて馬鹿々々しくて仕方ない。鼻で笑ってやろうとしたが、ピロテスの背後に控えているマヌエルの冷たい視線が見逃してくれそうにないので、心の内だけのことにした。
「おまえ、服を脱ぐときに意識したことはないか?」
そんなことあるか、と言いかけて、学生時代の更衣室での着替えを思い出す。軍隊に入ってからもあったことだが、アレクサンダーは着替え中、ときに他者の視線が気になったことが思い出される。
何人かの目が自分の肌を見ていることが、たしかにあった。気のせいかと思うこともあったが、気のせいではなかった。どうやら自分の身体が男ばかりの世界で、人目を引くものだと気づいたのは、かなり後になってからで、それを知ったときはなんとも不愉快に感じたものだ。
「良いか。白蓮となるからには、ただ衣を脱げば良いというものではない。脱ぐときも相手の視線を意識し、欲を引き出す脱ぎ方をせねばならぬ。それを考えながら脱いでみよ」
馬鹿々々しい……!
そんな想いが顔に出ていたのだろう、ピロテスの眉間に皺が寄ったのが目に入ったのと、左頬に軽い痛みを感じたのは同時だった。
「何をする!」
ピロテスが手にしていた薔薇の花でアレクサンダーの頬を打ったのだ。
大理石の床に深紅の花びらが二枚散った。
「なんじゃ、その反抗的な顔は? やる気がないのならば、おまえは黒蓮に落とされることになるのじゃぞ」
アレクサンダーは歯軋りしそうになりつつも、ここで抗っても利はないと判断し、しぶしぶ着ているものを脱ぎはじめた。
「なんじゃ、そのやる気のない脱ぎ方は?」
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