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魔婦の訓育 五

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「ただでやったりするものか。金を払ってくれる者に売るのじゃ」
 わなわなと震えるアレクサンダーに、ピロテスは悪魔のような笑いを見せる。
「まぁ、さすがに今日は初日ゆえ、写真はゆるしてやろう」
 一瞬の安堵のつぎに、激しい痛みがアレクサンダーを襲う。
「ああっ!」
 いきなり、股間を握られたのだ。それもかなり強く。
「くぅぅぅぅぅ……」
 歯をくいしばって耐えたが、閉じた瞼からはおさえきれないしずくがもれる。
「ほほほほ。痛いか? やはりここは普通の男と同じなのじゃな。ここを、もう一度、」
「ああ……っ!」
 ピロテスはふたたび床に両膝をつくと、アレクサンダーが驚いたことに、紅を塗った唇を開いた。
「あっ……! よ、よせ!」
 貪られる――。
 そんな気がした。
 生まれてはじめてのことに、アレクサンダーは恐怖すら覚えた。
 自分のされていることが信じられない。
 話には聞いたことがある。それは凄まじい快感を男たちに与えるものだと、アレクサンダーですら、さすがに男社会で生きていくうちに、知りたくはないが知識としては知っていた。
 だが、よもや自分がそれを受けることになるとは思わなかった。
 あの娼館での悪夢の一夜の、おぼろな記憶のなかでも、こんな真似はされなかったはずだ。
 最初、それは快感か不快感かわからない奇妙な感触と興奮をアレクサンダーにもたらした。
 だが、濡れた音が響くにつれて、やがて快感一色に変わっていった。
「うっ……うう!」
 脳が蕩けるような、凄まじい刺激をアレクサンダーは味わっていた。
 この興奮と悦楽が欲しくて、世の男たちは金や時間をかけて女を口説くのかと、そういった方面には、いたって世間知らずなアレクサンダーも思い知る。
 だが、アレクサンダーはこんなことを望んだことはなかった。
 性の交わりというものは、あくまでも子孫繁栄のためになすべきことであって、快楽追及のためにするのは間違っていると信じていた。
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