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魔婦の訓育 四

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「あっ……」
 痛みよりも、もどかしい刺激を感じてしまう自分に、アレクサンダーは悔しい。
「高貴な軍人様の写真となれば、さぞ高値で売れるであろうのう。おまえの同僚たちや社交界での知り合いなら、喜んで大枚はたいてくれであろう」
 ピロテスは、アレクサンダーの立場を知っているのだ。
 このひどい拉致や監禁は偶発的なものではなく、組織的に仕組まれていたものだということをアレクサンダーはあらためて実感した。
 彼らは、アレクサンダー=フォン=モールという人間を知りつくした上で、彼を誘拐し、異常な施術をすることで肉体を意図的に変成させ、この手酷い凌辱をあたえているのだ。ただ行き当たりばったりで、見栄えの良い裕福な青年を狙ったわけではないのだ。
「おまえが娼婦として客をとることになれば、男たちは競って大金を払うであろうのぅ。まぁ、そのまえに殿下が賞味なされるが。そして、殿下の前に出すまえに、まずは妾が味わってやろう。調教師の特権じゃのぅ」
「だ、誰に頼まれのだ……?」
 今のアレクサンダーにとって敵の首魁は殿下と呼ばれるレキウスだが、彼一人だけの企みとは思えない。遠い島に住む彼がなぜアレクサンダーに目をつけたのか。ヴルブナたちもからんでいるのか。あのときの状況を考えると、おそらくそうだろう。
「ほほほほほ。罪な男じゃな。おまえ、かなりの人間に恨まれているようじゃぞ」
 アレクサンダーは燃える肉体をもてあましながらも、かなりの人間というのが、誰なのか考えてみた。
「まぁ、それは良い。もはやおまえにはどうしようもないことじゃ。これからは、ここで妾の指導のもと、一日もはやく娼婦として成長することだけを考えれば良いのじゃ」
「写真を撮りますか?」
 背後から響くマヌエルの言葉に、アレクサンダーはぞっとした。
「そうじゃな。撮っておくか。あまりこの奴隷が我が儘を言うようでは、その写真を祖国の知り合いたちに送りつけてやろう」
「や、やめろ!」
 アレクサンダーはぞっとした。
「ほほほほ。嘘じゃ」
 だが、次につづいた言葉はけっしてアレクサンダーを安心させるものではなかった。
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