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魔婦の訓育 三

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 羞恥と、屈辱と、興奮に、背にも額にもほんのり汗を感じてくる。
 ピロテスの指は、的確に、するどくアレクサンダーの秘めた官能の泉を見つけたのだ。
 彼がほんの少し指を動かすだけで、アレクサンダーは自分でも信じられないほど、今まで経験したことのない感興を無理やり味あわせられてしまうのだ。
「こんな……、こんな」
 漏らす言葉も熱を帯びてきている。それを二人の召使と背後のマヌエルに聞かれているのかと思うと、また悔しさ、無念さに呻いてしまう。
 それでも、絶え間ない侵略に、アレクサンダーは、なけなしの軍人の誇りで、かなり持ちこたえた。
「なかなか強情じゃのう」
 最後の最後までふんばったが、やはり、限界はきた。
 指は、アレクサンダーがきつく目を閉じるたびに、侵略をゆるめ、アレクサンダーがかすかに自我を取りもどすところで、甘い囁きをかけてくる。
「さぁ、もう我慢できぬじゃろう? 素直になって、ねだってみるが良い。こう言うのじゃ、もう、いかせて、とな」
 ピロテスの露悪的なまでに下品な笑い声が火照る身体に一瞬水をかけ、アレクサンダーは怒りを盾に、さらにもうひとふんばり持ちこたえようとした。
「よいか、最初は抗え。嫌がれ。だが、最後には客にねだるのじゃ。もう我慢できない、いかせて……、と甘えるのじゃ」
 娼婦教育はすでに始まっているようだ。
「うう……だ、誰が言うか……!」
 なけなしの反発心がそう言わせたが、アレクサンダーの肉体は、主を裏切り、ピロテスの指になびいてしまう。若く、熱い血潮を秘めた肌を持つ、生きた人間の悲しさである。
「うう……! うううう……!」
 ピロテスはいわゆる性豪であった。
 彼の指は的確なうごきでアレクサンダーを追い詰め、きわどいところで退き、そしてまた追い詰め、とことん玩弄していくのだ。
 この異形の女王は、おそらくはその指であまたの男女を凌辱し、もて遊び、篭絡してきたのだろう。
 右手の指でアレクサンダーの秘園を侵略しつづけ、いまや扇を手放した左手の指で、アレクサンダーの胸をからかうようにまさぐる。
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