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虹の間 九
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「おまえの身体は……、今まで見たどんな奴隷……、いや、奴隷でなくとも、すべてのものと比べても変わっておる」
黒い女神の顔には奇妙な驚愕と満足が浮かんでいる。
「わらわは生まれつきのふたなりや宦官の身体も見たことがあるし、西洋医学によって去勢されたり、手術で肉体を改造したものも見たことがあるが、そのどれともおまえの身体は一致しておらぬな。この館でもおまえのような身体は見たことがない」
珍種のなかでもさらに新種の花を見たようにピロテスが感嘆した。
「まぁ、ある種のヘルマフロディトスじゃな。おまえは、ナイアスの泉に落ちてしまったらしい」
ヘルマフロディトスとは神話につたえられる両性具有者を意味し、ナイアスとは妖精の種族だが、彼らの泉の水を浴びると病気になったり気が狂ったり、同性愛者になったり両性具有になるという伝説がある。
かくいうピロテス自身もそのナイアスの泉に溺れたものだということは、自覚していないようだ。
「まぁ、そのような顔をするでない。おまえはまだわからぬが、ここでは、こういう身体であることがおまえにとって強味になるのじゃぞ」
その言葉はアレクサンダーの耳にはまったく聞こえず、ただこの気の遠くなるような恥辱に耐えるしかなかった。
少しでも脚を閉じようと努力すれば、背後のマヌエルがお仕置きとばかり、いっそう力を入れて脚を開かせ、そこに空気と光を感じてしまう。
はぁ……!
いくら感情を押し殺そうとしても頬は燃えるがごとく熱くなり、全身に無念の汗が浮くのを感じる。
アレクサンダーにとっては過酷な時間がのろのろと過ぎるのを、ただ待つしかない。
「しかし、まぁ……これは上玉のなかの上玉じゃ。さぞ殿下もよろこばれることじゃろう」
そこでまたピロテスが扇の先をアレクサンダーの、もっとも触れてほしくない箇所に押しつけてくる。
「うう……」
みずからがたてる歯軋りの音が響きそうだった。
アレクサンダーは辛さに背を反らす。
黒い女神の顔には奇妙な驚愕と満足が浮かんでいる。
「わらわは生まれつきのふたなりや宦官の身体も見たことがあるし、西洋医学によって去勢されたり、手術で肉体を改造したものも見たことがあるが、そのどれともおまえの身体は一致しておらぬな。この館でもおまえのような身体は見たことがない」
珍種のなかでもさらに新種の花を見たようにピロテスが感嘆した。
「まぁ、ある種のヘルマフロディトスじゃな。おまえは、ナイアスの泉に落ちてしまったらしい」
ヘルマフロディトスとは神話につたえられる両性具有者を意味し、ナイアスとは妖精の種族だが、彼らの泉の水を浴びると病気になったり気が狂ったり、同性愛者になったり両性具有になるという伝説がある。
かくいうピロテス自身もそのナイアスの泉に溺れたものだということは、自覚していないようだ。
「まぁ、そのような顔をするでない。おまえはまだわからぬが、ここでは、こういう身体であることがおまえにとって強味になるのじゃぞ」
その言葉はアレクサンダーの耳にはまったく聞こえず、ただこの気の遠くなるような恥辱に耐えるしかなかった。
少しでも脚を閉じようと努力すれば、背後のマヌエルがお仕置きとばかり、いっそう力を入れて脚を開かせ、そこに空気と光を感じてしまう。
はぁ……!
いくら感情を押し殺そうとしても頬は燃えるがごとく熱くなり、全身に無念の汗が浮くのを感じる。
アレクサンダーにとっては過酷な時間がのろのろと過ぎるのを、ただ待つしかない。
「しかし、まぁ……これは上玉のなかの上玉じゃ。さぞ殿下もよろこばれることじゃろう」
そこでまたピロテスが扇の先をアレクサンダーの、もっとも触れてほしくない箇所に押しつけてくる。
「うう……」
みずからがたてる歯軋りの音が響きそうだった。
アレクサンダーは辛さに背を反らす。
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