上 下
55 / 183

虹の間 四

しおりを挟む
「し、知るか! そんなものを受ける気はない!」
「では、主人の命令に反したということで、アレクサンダー様を鞭で打つことになります」
 眉が本当に困ったように顰められる。
「いくらでも打て! だが、調教など死んでも受けるものか!」
 ホホホホホ。
 ピロテスの笑い声がまた響く。
「こやつ、なかなか強情そうじゃな。ウラジミールとかいう小僧にくらべたら手ごたえありそうじゃ。おもしろい」
「ウラジミールはどうしたのだ?」
 先ほど連れていかれた少年の名を聞いて、アレクサンダーは気をひかれた。ピロテスはウラジミールのことを知っているのだ。
「あれも調教を受けるのじゃ。あれはな、〝黒蓮〟じゃ」
 ピロテスの顔に嘲りが浮かぶ。
「黒蓮?」
 白蓮とされた自分とおなじことかと一瞬思ったが、ピロテスの黒い目にになにやらひどく嫌なものを感じ、アレクサンダーは背にかすかなこわばりを感じた。
「そう。黒蓮じゃ」
「なんなのだ、黒蓮というのは?」
「ホホホホ。白蓮が殿下の妻となるのなら、黒蓮は奴隷たちの妻となるのじゃ」
 言葉の内容に心底怖気だったが、感情は出さないようにアレクサンダーは己を制御した。
 さらに気になるのは、ピロテスは奴隷‶たち〟と言わなかったか。
 アレクサンダーの疑問にこたえるかのようにピロテスは笑う。
「ホホホホ。そうじゃ、奴隷たちの公共物。最下層の男娼婦おとこしょうふとされるのじゃ。おまえが選ばれた花なら、ウラジミールは落とされた花じゃ」
 愉快そうに言うピロテス。男でありながら女の心を持つこの異形と異装の小権力者は、ひどく残酷な性分を秘めているようだ。
「な、なんてことを……!」
 会ってすぐ引き離されたウラジミールにはべつに友情も仲間意識もないが、それでも、そんな目に遭わされていいわけはないし、そう聞くと、もともと潔癖で、公正であることを自負してきたアレクサンダーの胸に同情心が沸いてくる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔族に捕らえられた剣士、淫らに拘束され弄ばれる

たつしろ虎見
BL
魔族ブラッドに捕らえられた剣士エヴァンは、大罪人として拘束され様々な辱めを受ける。性器をリボンで戒められる、卑猥な動きや衣装を強制される……いくら辱められ、その身体を操られても、心を壊す事すら許されないまま魔法で快楽を押し付けられるエヴァン。更にブラッドにはある思惑があり……。 表紙:湯弐さん(https://www.pixiv.net/users/3989101)

少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。 ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。 だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。

変態村♂〜俺、やられます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。 そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。 暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。 必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。 その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。 果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

おとなのための保育所

あーる
BL
逆トイレトレーニングをしながらそこの先生になるために学ぶところ。 見た目はおとな 排泄は赤ちゃん(お漏らししたら泣いちゃう)

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

処理中です...