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虹の間 三

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 ピロテスは漆黒の鳥の羽でつくられた扇を口元にやり、呆れたようにアレクサンダーを見る。
 どこの国でも、ある種の女たちはなぜかこういう小道具を手にしてときに顔半分をかくしたがる。それは自分の心と表情をあまり見せたくないからだろうか。そしてたしかにピロテスは女――すくなくとも心は女なのだ。
「く、供物とはなんなのだ」
 アレクサンダーは怒りにふるえつつも気を引かれて訊いた。
「ふん」
 ピロテスは鼻を反らした。高慢な女性そのものの仕草だ。
「何も知らぬ愚かものが。おまえは殿下に捧げられた白蓮、他のものは下々の人間にあてがわれた贄なのじゃ」
 意味するところを推察し、アレクサンダーは嫌な気持ちになった。
「暁の儀式の折り、おまえは殿下の妻となり、他の者は下賤の身の僕となるのじゃ」
「つ、つまり、売春ではないか! 人身売買をしているのか、おまえたちは!」
「おだまり!」
 ピロテスは扇でそばのテーブルを叩いた。近くの水差しの水がこぼれて数滴、大理石の床にしたたる。
 アレクサンダーですら一瞬たじろぐほどの気迫だ。
「よいか、この館では殿下の命令は絶対なのじゃ! おまえは逃げることはできぬ虜囚の身。おまえは殿下の奴隷であり、今はわらわがその身を預かっておる。おまえは、今はわらわの奴隷でもあるのじゃ」
「そ、そんなめちゃくちゃな、馬鹿な話があるか!」
「ふん。愚かものに何を言うても無駄じゃな。まぁ、よい。おいおいわかるじゃろう」
 鼻を反らすようにして、ピロテスは言葉をつづけたが、その内容はアレクサンダーをおぞけさせるものだった。
「今から、わらわはおまえに調教をほどこす。儀式の夜に向けて、おまえの身体を殿下の好みに合わせて調教するのじゃ。儀式の夜には、殿下を充分お楽しみさせられるようにな」
 今度こそ、アレクサンダーは絶句してしまい、息をすることすら忘れていた。
「な、な、なにを……!」
 なにを言っている! と怒鳴りつけてやりたいが、あまりの驚愕と怒りに言葉がつづかない。
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