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虹の間 一
しおりを挟む最初に気になったのは、鼻をつくような香りだ。高雅なものなのだろうが、ややきつ過ぎる。異国のものだから余計そう感じるのかもしれないが。
アレクサンダーの立っているところから、ちょうど真正面に、人が立っていた。
アレクサンダーは驚いて目を見張った。
「新しい白蓮か? ようこそこの《虹の間》へ」
少しかすれたようだが、充分美しいと感じられる声で相手は言った。
そこにいたのは、異形――アレクサンダーにとっては――の人だった。
身にまとっているのは黒絹の衣で、どことなく西洋のイブニングドレスを思わせ、他の召使たちとは明らかにに違うものを感じさせる。首にはきらめくダイヤモンドのネックレスをつけ、右腕にも大粒のダイヤをメインにした派手な装飾のブレスレットをつけ、西洋風の椅子に優雅に腰かけている。部屋の室礼はすべて西洋風で、象牙のテーブルに置かれている水差しと杯のみこの土地のもののようだ。
アレクサンダーは相手をあらためて見て、キティ・サロンで出会ったマダム、ヒルデガルドを思い出した。
どことなく、そういう職種の女性のようだが、マダムとは決定的に違うものがある。
「あ、あなたは……」
「この《虹の間》の女主、ピロテス」
アレクサンダーは眉をしかめていた。
相手のドレスの裾がゆらめき、二人の距離が縮まった瞬間、化粧と脂粉の匂いが高雅なかおりを制圧した。
「女主……」
ついアレクサンダーは口に出して言ってしまっていた。
相手は化粧をして、先ほどのレウキスとおなじく瞼を紫色に染めてはいるが、まちがいない。
(男だ)
女装しているが、男であることはアレクサンダーにはわかった。
「ホホホホ。わらわが女ではないとでも思っているのかえ?」
ピロテスと名乗った相手は、やけに古めかしい言葉づかいになった。
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