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背徳の洗礼 六
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アレクサンダーはあらためて決意した。どうにかして逃げなくては、ここにいれば、とんでもないことになる。そんな脅迫観念すらわいてくる。
浴場から出ると、新しい服が用意されていた。
土地の民族衣装なのか、薄地に漆黒の絹糸で袖や裾に唐草模様の刺繍がほどこされている。頭からかぶるようにして纏うので簡単に着れたものの、どことなくアラビア風で、寝間着すがたで歩いているようでアレクサンダーは落ち着かない。
女湯をつかっていた女性の人質たちとも廊下で合流した。彼女たちも似たような衣装をまとっていたが、色は薄紅だ。ものの本などで読んだハレムの姫君たちを思わせる。
皆さっぱりして少し顔色が良くなったようだが、当然ながら不安はぬぐえないでいるようだ。身体の線が透けて見えるのも、お互い落ち着かない。互いに目を逸らしあっていた。
二列になって歩くよう誘導され、偶然、アレクサンダーのとなりにはフランス人形のような少女が立った。
洗い髪が香り立つように美しく、細い首がひどく可憐だ。彼女がたしかシャルロットと名乗っていたことをアレクサンダーは思い出した。こうして近くであらためて見てみると、やはり美しい少女だ。伏せられた青い瞳は、かすかに潤んでいる。香水の残り香か、なんとも良い匂いがする。
彼女も、先ほどリカルドが呟いたように、これから自分たちはどうなるのだろう、という恐怖にさいなまされているのだ。
一行は廊下を歩きつづけた。
石の廊下をすすみ、階段を下り、食堂らしき場所に誘導された。
室は広々としており、ゆうに百人は収容できそうだ。
人質たちは、樫の木でつくられた長方形の大きなテーブルを囲んで、パンと果物という軽食を口にした。
(逃げるためには、体力をつけておかねば)
食欲などまるでなかったが、アレクサンダーはパンをちぎって食べてみる。
長いことまともな食事を口にしていなかったことを思い出し、いつもの三倍の時間をかけて咀嚼した。それでも三口食べてみて、それ以上食べる気はせず、切ってあるパイナップルをこれも少し口に入れた。
浴場から出ると、新しい服が用意されていた。
土地の民族衣装なのか、薄地に漆黒の絹糸で袖や裾に唐草模様の刺繍がほどこされている。頭からかぶるようにして纏うので簡単に着れたものの、どことなくアラビア風で、寝間着すがたで歩いているようでアレクサンダーは落ち着かない。
女湯をつかっていた女性の人質たちとも廊下で合流した。彼女たちも似たような衣装をまとっていたが、色は薄紅だ。ものの本などで読んだハレムの姫君たちを思わせる。
皆さっぱりして少し顔色が良くなったようだが、当然ながら不安はぬぐえないでいるようだ。身体の線が透けて見えるのも、お互い落ち着かない。互いに目を逸らしあっていた。
二列になって歩くよう誘導され、偶然、アレクサンダーのとなりにはフランス人形のような少女が立った。
洗い髪が香り立つように美しく、細い首がひどく可憐だ。彼女がたしかシャルロットと名乗っていたことをアレクサンダーは思い出した。こうして近くであらためて見てみると、やはり美しい少女だ。伏せられた青い瞳は、かすかに潤んでいる。香水の残り香か、なんとも良い匂いがする。
彼女も、先ほどリカルドが呟いたように、これから自分たちはどうなるのだろう、という恐怖にさいなまされているのだ。
一行は廊下を歩きつづけた。
石の廊下をすすみ、階段を下り、食堂らしき場所に誘導された。
室は広々としており、ゆうに百人は収容できそうだ。
人質たちは、樫の木でつくられた長方形の大きなテーブルを囲んで、パンと果物という軽食を口にした。
(逃げるためには、体力をつけておかねば)
食欲などまるでなかったが、アレクサンダーはパンをちぎって食べてみる。
長いことまともな食事を口にしていなかったことを思い出し、いつもの三倍の時間をかけて咀嚼した。それでも三口食べてみて、それ以上食べる気はせず、切ってあるパイナップルをこれも少し口に入れた。
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