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背徳の洗礼 一
しおりを挟む巨大な石門が開き、一行はぞろぞろと進んでいった。アレクサンダーはやはり最後尾でついていった。
赤茶けた壁には古来の絵が描かれている。百合、薔薇、牡牛、獅子、伝説の幻獣グリフィン。以前見た遺跡に似通ったところがある。
おそらくは古代の宮殿をモデルにして近代にはいってから再建築したものだろうが、そこそこの歴史と風格は感じられる。
庭は広々としているが、欧米の庭園のように噴水や花壇はなく、東洋の庭園のように木石を工夫して趣向をこらしているおもむきもなく、ひどく簡素な風情だ。
石の歩道を歩んでいくと、大きな扉の前についた。銃を持った巨漢の黒人二人が扉の左右で文字どおり睨みをきかせて、ぎょろりとした目でアレクサンダーたちを睥睨した。彼らの身なりはこの地の衣装のようで、ソロモンの装いと似ている。
奴隷たちは猛獣のような黒人兵に睨まれながら、順番に扉のなかへと入った。
アレクサンダーはここでも一瞬、目を見張った。
外壁は赤銅色だが、邸内は白壁で、床は大理石で埋め尽くされていた。調度品は作り物の暖炉や長椅子、敷かれた獅子の毛皮と、ヨーロッパ風だ。
だが、壁際に東洋の大きな壺が置かれてあったり、この島伝統の調度品などもおかれてあり、文化融合、もしくは混雑の態をしめしている。ふしぎと下品には見えないのは、華美にならない程度でおさえてあるからか。
「奴隷どもよ、聞け、これからおまえたちを〝殿下〟の御前に連れていく。くれぐれも無礼な真似をするでないぞ」
殿下とは誰か、と内心のアレクサンダーの問いに答えるようにソロモンはつづけた。
「殿下は、この館のご主人様であり、この土地の君主でもある。そして、これからはお前たちの主だ。お前たちは全員殿下に買われた奴隷だということを忘れるな」
「冗談じゃない!」
叫んだのは、船のなかで必死に訴えていた少年だ。
あまり流暢でない英語で彼は怒鳴った。
「こんなことが許されるものか! 僕の父は国会議員だ! 国に連絡しろ!」
ソロモンは開いている右目で、ぎょろりと彼を睨む。
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