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奴隷市場 六
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「彼女をどうするのだ?」
たまらなくなってアレクサンダーは訊いていた。この場でそれを訊ける相手はパパスしかいない。
「安心しろ。彼女は殺さない。夫が大物でな。裏取引がうまくいき、祖国に返すことになった」
莫大な身代金と、いっさい犯人を追及しないという条件で人質は指一本傷つけられず――肉体的には――、夫のもとに返されることになったという。
おそらくは彼女の夫は相当の地位の人物で、裏の世界にも通じているようだ。
「ただし、あの格好のままでな。くくくく」
やはり近くにいたハサピスが口をはさむ。
「これから小型船の帆柱にあの格好で吊りあげて、迎えにきた連中に引き渡すのさ。そいつらは、めったに見られない上流婦人の※※※※を見れるんだぜ。さぞかし目の保養になるだろうよ。聞けば、あの女、子爵家の出で大臣の奥方らしいぜ。それが、大股びらきで御開帳とはな」
ハサピスはのけぞって笑った。ほかの兵士の笑い声も聞こえた。サファイア色の空とエメラルド色の海のはざまに、毒のような嘲笑の渦巻きがおこる。
哀れな大臣夫人の耳にも、他の奴隷たちの耳にも、その卑しい笑い声は耳に痛いほど響いているはずだ。
奴隷たちは、アレクサンダーのように、すぐ近くにある羞恥の地獄絵図に一瞬目をうばわれ、あわてて目を伏せ、身をすくませ、足早に通り過ぎようとする。
「いいざまだな。帰国したところで二度と人前に出れやしない。ひっひっひ」
ハサピスの笑い声に、かつて聞いたヴルブナの卑しい笑い声がかさなり、アレクサンダーはぞっとする。
「迎えにくるのは、その国の海軍元帥を指定したそうだぜ」
ハサピスは痛快でたまらないというふうにまたのけぞって笑う。
「なんて……酷いことを」
想いがそのままアレクサンダーの口からこぼれた。
貴族というものは、身分の下の者より、同等や上位の者の目を意識することはアレクサンダーにも充分想像がつく。
たまらなくなってアレクサンダーは訊いていた。この場でそれを訊ける相手はパパスしかいない。
「安心しろ。彼女は殺さない。夫が大物でな。裏取引がうまくいき、祖国に返すことになった」
莫大な身代金と、いっさい犯人を追及しないという条件で人質は指一本傷つけられず――肉体的には――、夫のもとに返されることになったという。
おそらくは彼女の夫は相当の地位の人物で、裏の世界にも通じているようだ。
「ただし、あの格好のままでな。くくくく」
やはり近くにいたハサピスが口をはさむ。
「これから小型船の帆柱にあの格好で吊りあげて、迎えにきた連中に引き渡すのさ。そいつらは、めったに見られない上流婦人の※※※※を見れるんだぜ。さぞかし目の保養になるだろうよ。聞けば、あの女、子爵家の出で大臣の奥方らしいぜ。それが、大股びらきで御開帳とはな」
ハサピスはのけぞって笑った。ほかの兵士の笑い声も聞こえた。サファイア色の空とエメラルド色の海のはざまに、毒のような嘲笑の渦巻きがおこる。
哀れな大臣夫人の耳にも、他の奴隷たちの耳にも、その卑しい笑い声は耳に痛いほど響いているはずだ。
奴隷たちは、アレクサンダーのように、すぐ近くにある羞恥の地獄絵図に一瞬目をうばわれ、あわてて目を伏せ、身をすくませ、足早に通り過ぎようとする。
「いいざまだな。帰国したところで二度と人前に出れやしない。ひっひっひ」
ハサピスの笑い声に、かつて聞いたヴルブナの卑しい笑い声がかさなり、アレクサンダーはぞっとする。
「迎えにくるのは、その国の海軍元帥を指定したそうだぜ」
ハサピスは痛快でたまらないというふうにまたのけぞって笑う。
「なんて……酷いことを」
想いがそのままアレクサンダーの口からこぼれた。
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